国内でも太陽光発電のグリッドパリティが近づいてきています。グリッドパリティ(Grid parity)とは、再生可能エネルギーによる発電コストが電力会社から購入する電力料金や発電コストと同じ、もしくは安くなることをいいます。

設置条件や電力料金、発電量などによってグリッドパリティになる具体的な条件が変わってきます。

売電価格と太陽光発電導入コストの変化

太陽光発電は、そのシステムが進化しているだけでなく、取り巻く環境も変化してきています。これまでは買電価格と売電価格が同じでしたが、2009年からFITが48円/kWhからスタート。それが年を追うごとにどんどん下がってきています。

震災をきっかけに原発の稼働がストップし、買電価格は以前よりも3割ほど値上がりしています。こうなると、数年後には買電価格と売電価格がクロスしてしまう事も考えられるのです。

一方、太陽光発電システムの価格はどうなのかというと、数年前に比べて安くなってきています。高くてなかなか手が出せなかったのが導入しやすくなってきており、それが太陽光発電を広く普及させています。

導入の際にかかった費用を10年で割ることで発電単価を知る事ができますが、それが電力会社から電力を購入するよりも安いという、グリッドパリティが起こりつつあるのです。

ドイツからみるグリッドパリティの影響

グリッドパリティによる影響予想は、エネルギー先進国であるドイツが参考になります。ドイツでもFIT制度を導入していますが、すでに終わりそうな状態です。売電価格は買電価格よりも安くなっていることからも、売電するよりも自家消費したほうが得。

その為、太陽光発電システムを導入する家が急激に増加しています。こうした動きは、日本でも近い将来に見られる可能性があります。分散型エネルギーシステムの構築を目指しているだけあって、そうした政策からみると理想的な流れといえます。

グリッドパリティを見据えたシステム選び

近い将来、グリッドパリティが起こりうることを考えると、太陽光発電システムの選び方もこれまでとはちょっと変わってきます。

導入コストも気になるところですが、毎年どれだけの発電しそれが何年続くのかといった発電量と耐久性です。10年間稼働したシステムと20年間稼働したシステムでは、発電量に大きな差が出てきます。

太陽光発電システムは経年劣化するものであり、10年後には5〜10%ほど発電量が減少するといわれており、単結晶・多結晶・化合物系といったセルの種類によっても変わります。また、屋根の上に長年設置することで起こりうるリスクから起こる変化も無視できません。

長く使うだけあって、品質や耐久性を十分に考えた製品選びをしなければいけないのです。

太陽光発電と蓄電池のセット使いが鍵

太陽光発電での発電は昼間だけしかできませんので、夜は電力会社から購入する必要があります。グリットパリティを達成させるためには、昼間の発電時に発生した余剰電力を貯めておき、夜に使えるようにする必要があります。

つまり、蓄電池が今後の太陽光発電システムにおいて必需品となります。
太陽光発電と蓄電池がセットで利用できるシステムであれば、余剰電力を貯めこむだけでなく、夜間の安い電力を貯めて天気が悪く発電量が少ない昼に利用することも可能となります。

高価買取の終了における変化

太陽光発電による高値買取は、2009年に始まり2019年に終了します。その後の買取はどういった内容になるのかまだはっきりとはしていませんが、安い価格での取引がおこなわれるものと予想されます。

その場合、安い値段で売電するか、それとも蓄電池を導入して自家消費をするかのどちらかを選択する必要に迫られます。

また、太陽光発電市場においては、太陽光発電とバッテリーの組みあわせプランが活性化し、FIT制度に頼らなくても導入できる状態が確立しそうです。

グリッドパリティの基準

グリッドパリティの算出方法は、稼働期間において発電した電力を総事業費で割って算出。「○円/kWh」という形で表します。太陽光発電では、キロワットあたりのシステム価格とメンテナンス価格を足したものを、耐用年数と年間発電量で割った数字となります。

環境への影響から、太陽光発電システムなどにおける再生可能エネルギーの浸透が促進されています。ですが、かかるコストは高く、補助金やFIT制度なしでは難しい面があります。

グリッドパリティは、こうした国や自治体のサポート無しでも導入できるようにするための指針とも考えられているのです。

グリッドパリティは地域環境で異なる

地域ごとで電気料金、太陽光発電システムの導入費用におけるメーカーの差、キロワットあたりの発電量の違いといった事からも、グリッドパリティは環境によって条件が異なります。基盤の系統電力の整備が発達している先進国などではグリッドパリティは高いレベルに。

基盤の系統電力の整備が発達している先進国などではグリッドパリティは高いレベルに。環境や健康への悪影響が心配されるディーゼル発電機を使用している島や無電化地域では、太陽光発電はこれらの問題を解決するだけでなく、コスト的にも良いとされています。

事業者に利益を抜いて考える

2014年度における太陽光発電の固定買取価格は、住宅用が10年間で37円/kWh、非住宅用においては20年間で32円/kWhとなりました。この数字には事業者の利益分が含まれるので、正確な発電原価はもう少し下がります。

調達価格等算定委員会による数値を使って計算すると発電原価は25円/kWh程で、これは家庭用電力料金とほぼ同じ金額です。

一般家庭におけるグリッドパリティは25〜28円

グリッドパリティは地域によって差があるため、世界共通に指針といったものはありません。ただ、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による定義は発表されています。NEDOによると、家庭用電気代においてのグリッドパリティは「23円/kWh」です。

ただ、この単価は過小評価されている可能性もあり、実際の電気代から算出した数字とはかけ離れてしまうこともあります。一般家庭におけるグリッドパリティは、25〜28円になる可能性の方が高いです。

世界各国におけるグリッドパリティ

グリッドパリティは、日本だけでなく世界各国でも達成されつつあります。イタリアやオランダ、スペイン、ドイツ、オーストラリア、イスラエル、メキシコでは、日本より早い2012年には一般家庭電力がグリッドパリティに達しています。

ちなみに、アメリカは日本とは基準が異なる「太陽電池モジュール価格=1ドル/W」といった算出方法。2009年にファースト・ソーラー社が生産コストを下回り、2011年には一部の地域がグリッドパリティに達しています。

国によって電気料金や発電コスト、日射時間などの条件が異なりますが、次々とグリッドパリティが達成されています。グリットパリティの達成と共に、消費者がより安い電力を選べるようになってきているのです。

2014年において、家庭用電力がグリッドパリティを達成しました。NEDOでは、2030年までに基幹電源レベルでのコスト低減が達成されると予想しています。こうした流れからも、太陽光発電は儲けを取るのが難しいといわれていた時代は過去の話になりそうです。

ビジネス的にも、ますます成長が期待されてくるでしょう。