MOX燃料と呼ばれるプルトニウムとウランの混合物を、電子力発電所で再度燃料として使うことをプルサーマルとはといいます。プルトニウムの「プル」と、サーマルニュートロン・リアクターの「サーマル」をとってつけた呼び名です。

ウランとプルトニウムをリサイクルして使っていることからも、エネルギーのリサイクルになるとして研究・開発が進んでいます。

プルサーマル計画の意味

一度、原子炉で使われた燃料を使えるように施し、MOX燃料として原子力発電所でリサイクルすることは、資源が乏しい日本では重要なエネルギー政策の一つになっています。これを、プルサーマル計画と呼んでいます。

ウラン燃料は「ウラン235」と「ウラン238」で出来ており、核分裂しにくいウラン238が新しいエネルギー源・プルトニウムとして再利用されます。

プルトニウム239は中性子がくっつくと核分裂を起こして熱エネルギーを発生。ウラン燃料は数年で使い終わってしまうのですが、ここからまだ使えるウランや、新たに生まれたプルトニウムがエネルギーとして活用されていくのです。

「もんじゅ」に代わる発電方法として注目

MOX燃料は当初では、消費した以上に燃料を生み出すといわれている高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で使われる予定でした。ところが、事故が相次ぎ計画が頓挫。実現できる見込みが低い事から、プルサーマル発電に利用する事になったのです。

最初に取り入れられたのは2009年、九州電力玄海原子力発電所です。

その成果から、他の原子力発電所でも導入予定でしたが、東京電力福島第一原発は2011年の東日本大震災の事故で、四国電力伊方原発と関西電力高浜原発は定期検査で運転停止と導入が引き延ばされています。同時に、他の原子力発電所への導入も見送られています。

また、青森にある六ヶ所村再処理工場においては、使い終わった核燃料からウランとプルトニウムを取り出す作業がおこなわれるはずでしたが、稼動できる目処が立っていないことからも、フランスやイギリスで再処理をおこなっています。

世界と日本のMOX燃料導入状態の差

従来のウラン燃料だけで成り立っている原子炉においても、発電することによってプルトニウムが発生します。その割合はウランが約7割、プルトニウムは3割程です。

ところが、プルサーマルの原子炉では最初からプルトニウムが入っているので、その割合も5割と多くなります。日本ではまだMOX燃料の使用実績は6体(2基)と少ないですが、フランスでは2,894体(21基)と多く、40年以上前から使われている状態なのです。

プルサーマルの安全性

原子力発電所の設備でも重要な部分を変更をする際には、原子炉等規制法に基づき、安全性などを確認しながら厳正な審査において決定されます。

日本では伊方発電所3号機においてプルサーマル計画が実施されていますが、その審査には約1年半かかり、2006年3月に許可が下りてスタートしています。

また、2013年に新規制基準が施行されたことにより、すでに許可を得ていたMOX燃料40体についても、新規制基準において適合しているかどうかが審査され、2015年7月に原子力規制員会から許可が出ました。

審査においては重大事故などへの対策が問われるものとなり、その安全性を高いレベルで計っています。

プルサーマル計画で変わるエネルギー利用

日本は世界でもエネルギー消費量が多い国で、世界全体の約5%を占めているほど。ただ、自給率は数%というエネルギー資源がほとんどない状態なので、海外からのエネルギー輸入に頼っている状況です。

今後、日本だけでなく世界各国でのエネルギー消費量の増加が予想されていますが、石油や天然ガスなどのエネルギー資源には限りがあります。

いずれ枯渇してエネルギー不足になることが懸念されているだけに、その解決法ともなりえるプルサーマルが注目されています。今後の有効利用が期待されているのです。