一般的に見ると、毎月の収入から光熱費の割合を減らすことは決して容易ではありません。しかし、電気やガスを使わないようにするのではなく、自家発電で得たエネルギーを利用すれば、光熱費はゼロにできるのです。
今回は、光熱費をゼロにする方法について解説していきます。
光熱費をゼロにするにはオール電化への移行が大前提
光熱費をゼロにするには、エネルギーを自ら作り出すことが必須です。しかし、一般的に家庭で作ることができるエネルギーは電気しかありません。
家事にガスを使用すると、光熱費ゼロには決してならないのです。そのため、発電による光熱費ゼロを達成している世帯の大部分は、ガスによる給湯や加熱を行っていません。
もちろん、ガスを使用しているご家庭でも発電をされていた方は多くいらっしゃるのですが、あくまで光熱費の支出の足しにするという認識のもとに行われていました。
しかし、現在は自宅の光熱はすべて自分で賄う時代に移行してきており、エネルギーの調達方法を考えると、ガスの使用は大きな障害となる訳です。
日常的に使用するエネルギーを電気に限定する【オール電化】を導入することで、自ら発電したエネルギーを家庭内の光熱需要に対して使用できるようになります。
特に、プロパンガスは相対的に電気代よりも高いことも多いので、使用するエネルギーを電気に統一するメリットはかなり大きいです。
光熱費ゼロを実現するメリット
光熱費をゼロにすることで、光熱費にかかっていた費用を別のことに使えます。
たとえば、その分を家賃や住宅ローン返済の補填、貯蓄、家族のレジャー費用などに充てるなら、家計費に余裕が生まれるでしょう。
さらに、オール電化にすればガスを使わないので、ガスの基本料金が不要になり、毎月の固定費が節約できます。オール電化は火災のリスクが低くなることから、火災保険のなかには保険料が割引になる「オール電化住宅割引」があるほどです。
さらには、太陽光発電を設置している建物を対象とした「エコ設備割引」を備えている保険会社もあります。
電気料金がこれから値上がりする理由
すでに日本の電気料金は増加傾向にあります。そして、これからも電気料金は値上がりが続く見通しです。
気候変動を世界全体で防ぐ「脱炭素」の流れで、これまで安く発電に使えた石炭利用が減らされていく可能性が高いからです。
エコ先進国といわれるベルギーやドイツなどは、石炭火力発電所の廃止を進めています。日本でも、石炭火力に融資しないメガバンクや、投資を中止する企業が続出しています。
安くてCO2排出量が多い石炭火力発電が減り、代わりのもので発電すれば、そのコストが電気料金に転嫁されて値上がりにつながるということです。
一方の太陽光発電は、一度つけてしまえば将来的に原価ゼロに近い状態で発電できます。日本の再エネ導入は用地不足や電力供給の事情で足踏みしていますが、自宅の屋根で発電すれば、いち早く発電フリーの電力に近づくことができるのです。
光熱費を自家発電によってゼロにする仕組みは?
また、現在は電気の使用目的も家庭内の家電だけでなく、マイカーやアウトドア機器など活用できる幅が大きく広がっているのです。ここでは、総合的に光熱費をゼロにできるベストな方法をご紹介しましょう。
太陽光パネルは省エネに特化した住宅で効果をあげる!
自家発電方法で最もメジャーなものと言えば、【太陽光パネル】による発電方法です。
昔は導入機器が非常に高額だったので、全体的に見れば一部のご家庭だけが使えるものでした。しかし、近年は太陽光パネルなどの発電機器や、工事費用の低価格化が進んでおり、多くの人が始められる発電方法になりました。
さらに、国が太陽光発電の普及拡大を目的に導入した「固定価格買取制度(FIT制度)」も、多くの家庭が太陽光発電を手にするきっかけをもたらしています。
住宅用の太陽光発電が固定価格買取制度を利用すると、太陽光発電で発電した電気から、使わずに余った分を電力会社に売る(売電)ことができます。
売電する時の価格は毎年国が定めており、認定された売電価格が10年間維持できると約束されます。
つまり、固定価格買取制度は、太陽光発電を取り付ける費用を回収できる仕組みによって、太陽光発電をたくさんの家につけてもらおうとしているのです。住宅に太陽光発電をつけるときは、この制度を積極的に利用するご家庭がほとんどです。
光熱費ゼロのための自家発電で注意すべきポイントは?
これまで、光熱費ゼロでの生活は自家発電を導入することでスムーズに達成できることをお話してきました。
家庭の中で自家発電を進めていくには、いくつかの注意点があります。そのポイントを大きく2つに分けて説明していきます。
省エネ・断熱の工夫は欠かせない
自家発電による光熱費ゼロを進めるためには、前提があります。それは、【エコ住宅】としての機能を住まいが備えていることです。家庭内で消費するエネルギー量も、減らしていく工夫も重要なのです。
そこで参考になるのは、エコ住宅の機能性です。できるかぎり、エコ住宅の特徴に近づけるように工夫をしましょう。
エコ住宅の特徴は、次の3つです。
- 断熱性が高い
- 室内に光を取り入れやすい
- 省エネ
エネルギーの多くは空調と照明のために使われますので、外気温の影響をうけない断熱性と、照明がなくても室内を明るくする工夫が求められます。
省エネは、消費電力が少ない家電を選ぶことも大切です。その上で、電気の無駄遣いをなくしていく行動が必要なのです。
蓄電のためのバッテリーは良質なものを選ぶべき!
自然エネルギーを用いた自家発電で生活するには、蓄電池が欠かせません。
自然エネルギーの自家発電は、発電量がコントロールできないものです。電気が必要な時に使えないリスクが高く、ストレスに感じてしまうかもしれません。
しかし、近年の蓄電池は機能性が飛躍的に向上したこともあって、発電した電気を【財産】として扱える時代になりつつあります。
発電機器とあわせて使う蓄電池は、良質なものを選ぶことが必要です。自家発電の成否は蓄電池の質にかかっていると言っても過言ではないからです。
質の悪いバッテリーを使用してしまったために、想像していた発電量が得られなかったと感じる方も多いのです。近年は海外製の蓄電池が低価格化を進めており、安さを最重視される方は特に質の悪い蓄電池に出会いやすくなります。
蓄電池を選ぶときは、質とコストをバランスよく見て検討してください。
光熱費以外にも!太陽光発電や蓄電池を導入するメリット
光熱費ゼロを目指す以外にも、太陽光発電や蓄電池を導入するメリットがあります。ここでは、電気料金ゼロなどの直接的なメリット以外の導入メリットについて紹介します。
災害が起きたときも安心!停電時に電気を使用できる
太陽光発電設備と蓄電池を導入すれば、「災害時の停電対策になる」という大きなメリットがあります。近年頻発している地震や豪雨などの災害により停電が起こっても、晴れていれば太陽光発電で電気を得ることができるのです。
停電中、太陽光発電があれば冷蔵庫やテレビなどの家電を使えます。
とくにスマートフォンの充電ができることは、非常時に欠かせない情報収集ができ、家族や友人と連絡が取れるので大きな安心につながるでしょう。
蓄電池の組み合わせで非常時の暮らしも安定
太陽光発電に蓄電池を組み合わせれば、家庭で使い切れなかった余剰電力を貯められるので発電した電気が無駄になりません。太陽光で発電できない夜や雨の日も貯めておいた電気が使えます。
災害時の自宅避難では、今までの生活に近い状態を保って生活できるので、非常事態のストレスを抑える効果が期待できますね。
パネルの断熱効果で夏は涼しく冬は暖かい
太陽光パネルを屋根に設置すると、パネルが太陽からの直射日光を遮るため、夏は涼しく過ごせます。パネルを設置している場合としていない場合では、2〜5度も室温が下がるとされているのです。
冬は、日中に温められた空気が夜に逃げてしまう「放射冷却」をパネルが防いでくれるので、室内の熱を外に逃さず暖かく過ごすことができます。パネルがあることで、冬場は室温が5.23度も高くなるというデータもあるほどです。
太陽光パネルで断熱効果が得られるため、1年を通して室内の気温を快適に保つことができるでしょう。冷暖房に使う電力使用量を抑えられ節電できるメリットは、CO2削減にもつながるので環境にもよい影響があると考えられます。
電気自動車の燃料費もゼロに?!
太陽光発電設備と蓄電池を導入すると、電気自動車の燃料費を抑えられるというメリットも得られます。
太陽光発電で発電した電力を使えば、電気自動車が走るために必要なエネルギーを賄うことができるのです。ガソリンなどの燃料代が削減できるので、家計の負担は減るでしょう。
昼間に電気自動車で走る場合、太陽光で充電するには?
太陽光発電から直接充電する場合は、太陽の光がある昼間しか充電できません。そのため、「トライブリッド」と呼ばれる蓄電池を併用することをおすすめします。
このタイプの蓄電池は、昼間の太陽光で発電した電気を貯めておき、車を使わない夜間に充電する仕組みです。
トライブリッド蓄電池は、2018年にニチコン株式会社によって開発・発表されました。トライブリッド蓄電池を使えば、日中に電気自動車をよく使う人でも不便を感じることなく蓄電池を活用して充電できます。
光熱費ゼロを実現するためにいくら必要?
電気料金をゼロにするために発電設備を導入したくても、果たしていくらかかるのかが気になるところです。この項では、太陽光発電、蓄電池、オール電化設備の導入費用と目安について詳しく解説していきます。
太陽光発電の価格相場
太陽光発電を導入するには、システム費と工事費がかかります。住宅用の太陽光発電は1kWあたり20万〜30万円が相場で、一般的な住宅では4〜6kWが標準的な積載容量です。
5kW載せる場合、100万〜200万円かかることになります。さらに「高所作業のために足場を組む必要がある」「通常の部材のほかに必要なものがある」といった場合には、別途料金がかかることもあります。
詳しい工事費用については、案件ごとの具体的な金額を業者に確認することが必要です。太陽光発電設備の設置費用は、メーカーや施工業者によって異なるため、複数業者の見積りを比較検討することが大切です。一般的な相場を踏まえたうえで、より安く信頼できる業者を選ぶようにしてください。
蓄電池設備費の相場
蓄電池の導入には、本体の購入費用と組立てなどの設置費用のほかに、配線など電気系統の工事費用がかかります。
4人家族の住宅では、5〜7kWhの蓄電容量が標準とされています。5〜7kWhの家庭用蓄電池の費用相場は90万~160万円程度です。
蓄電容量が大きくなるほど製品の価格も高くなるので、本当に必要な蓄電容量はどれくらいなのかを検討します。各家庭で使う電力量を把握して、ほどよい容量の蓄電池を選ぶようにすれば、初期費用を抑えることができるでしょう。
最初から適正な容量がわからない場合、ゆとりがあるサイズを選ぶのが良いでしょう。あるいは、設置後に増設できるタイプの蓄電池を買うのもおすすめです。
実際に使ってみて「足りないな」と感じたときのため、同じメーカーの機種で増設できる設計の製品もあるのです。
あとから増設できる蓄電池
蓄電池に関しても、同じような性能の製品でもメーカーや施工業者によって価格は異なります。そのため、1社だけの見積りで決めるよりも、複数の業者を比較検討して少しでも安く導入するのが大切なポイントです。
オール電化設備費の相場
オール電化にするためのリフォームのなかでも一般的なのが、IHクッキングヒーターとエコキュートの設置工事です。IHクッキングヒーターとエコキュート、両方を設置する場合の工事費用の相場は、60万〜100万円程度とされています。
ガスを使う床暖房をリフォームする場合には、30万〜40万円がかかります。エコキュートのお湯を使う床暖房にすると25~100万円のリフォーム費用がかかりますが、ガス代はかかりません。長い目で見てどちらがお得なのか、検討してみましょう。
オール電化にする場合も、1社だけではなく複数の業者から見積りを取って比較し、初期費用を抑えることが大切です。
費用負担を軽減!補助金制度について
光熱費をゼロにするために設備を導入する場合には、補助金制度を受けるといいでしょう。高価に感じられる設備費用ですが、補助金を活用すれば初期費用を抑えることが可能です。
以前は国と地方自治体から補助金が出ていましたが、太陽光発電と蓄電池に関して国からの補助金は廃止されました。
地方自治体の補助金制度は継続していますので、お住いの自治体に確認してみましょう。一例として、以下に東京都の補助金を紹介するので参考にしてください。
【東京都の補助金】※2020年2月現在
- 太陽光発電(港区の場合):最大出力に応じて1kWにつき10万円(上限40万円)
- 蓄電池:機器費の1/2、もしくは「蓄電池システムの蓄電容量に1kWh当たり10万円を乗じた額」と「60万円」のどちらか小さい額
- エコキュート:「東京ゼロエミポイント」1万ポイント(1ポイント1円換算で商品券などに交換できる)
- ビークル・トゥ・ホームシステム(V2H):機器費の1/2(1台当たりの上限額は30万円)
補助金を利用することで、初期費用を抑え導入時の負担を減らすことができます。自治体によって補助金の有無や内容が異なるため、詳しい内容は管轄の自治体に確認しましょう。
発電設備の「元」は取れる? 設置費用を安くするのが最大のコツ
太陽光発電の設置費用は高額ですが、電気を売る収入と、電力会社へ支払う電気料金を節約できるので、実質的に「元が取れる」仕組みになっています。
それでも、設置費用があまりに高額だとFIT制度を使っても元が取れなくなってしまいます。一括見積りで設置費用を安くして、家計の負担を減らしましょう。
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