固定価格買取制度とは、太陽光発電など再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取る制度のことです。

毎年その買取価格が決められており、その価格は年々下がってきているものの、マイナスにはなっていませんので損をするレベルではないと言われています。

固定価格買取制度の詳しい仕組みとは

固定価格買取制度

固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を買い取る制度です。再生可能エネルギーには太陽光発電をはじめ風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電とあり、国が定める要件を満たした設備で作られている電気が対象となります。

一般家庭などで設置される10kW未満の発電設備では、発電した電力は自家消費用として優先的に利用されます。その上で電気の発電量が使用量を上回った時、つまり余った電力が買い取られて売電収入となり、それ以外の設備では発電した全ての電力が買取対象となります。

発電された電気は、電力会社の送電線から電力会社に送られ買い取られます。その際かかった費用については、電気を利用する全ての人の毎月の電気代の中に、電気の使用量に応じ再生可能エネルギー賦課金として組み込まれ負担する仕組みになっています。

再生可能エネルギー賦課金は、毎月ポストに入れられている「電気ご使用量のお知らせ」に記載されています。ただし、国が認める事業所などでは8割ほど免除されています。

年度 単価(1kWhあたり) 需要家モデル負担額(使用量260kWh/月)
2021年 3.36円/kWh 月額873円、年額10,483円
2022年 3.45円/kWh 月額897円、年額10,764円
2023年 1.40円/kWh 月額364円、年額4,368円

なぜ固定価格買取制度は始まったのか?

これまでの日本は、原発や大型火力などの発電方法が主力でした。この集中型インフラは震災に弱いほか、輸入資源への依存度が高く、安定性に欠ける一面があったのです。

そこで、政府は固定価格買取制度を取り入れ、再生可能エネルギーの拡大をすすめることにしました。

再生可能エネルギーを増やす理由

再生可能エネルギー
  • 国内のエネルギー自給率の向上
  • 地球温暖化問題対策

固定価格買取制度は、「再生可能エネルギー」の普及を目的として開始されました。再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、水力といった自然界に常に存在するエネルギーのことを指します。

なぜ石炭・石油火力発電も減らすのか

原子力発電が問題視されているのはご存知でしょうが、代わりに火力発電があるはずだとお思いかもしれません。

石油や天然ガスといった資源は将来的に枯渇すると予想されている上に、こうした資源を持たない日本にとっては依存リスクが大きいものです。

2017年のデータによれば、石油などの資源が少ない日本のエネルギー自給率は9.6%で、他国と比べても低い水準となっています。これほどまでに輸入資源に依存している現状は、産油国をめぐる情勢に振り回されやすく、安定性があるとは言えません。

世界的な「脱炭素」の流れに乗る

世界的な「脱炭素」の流れに乗る

近年では地球温暖化や、それに伴う気候変動も問題視されています。

気候が急激に変わると、地域の経済活動や資産に甚大なダメージを負います。「IPCC第5次評価報告書」には、CO2などの温室効果ガスが増えて、地球の気温上昇が続いた場合のリスクが指摘されています。

そのため、銀行は石炭発電所への融資を断り、保険会社が環境重視の投資先を選ぶといった動きが出ています。石炭や石油による発電は、いまやビジネスパートナーを逃す選択肢になってしまったのです。

日本を含む世界の国々は、エネルギーをめぐる問題解決に再生可能エネルギーが役立つと確信しています。再生可能エネルギーへの投資を募るためにも、固定価格買取制度は必要とされ続ける存在なのです。

設置容量で異なる太陽光発電の2種類の買取システム

設置容量10kwをボーダーラインに、以下なら余剰買取制度を、以上なら余剰買取制度もしくは全量買取制度のどちらかを選択できるようにしています。ちなみに、前者のシステムを住宅用、後者を産業用と呼んで分けています。

余剰買取制度(住宅用)の仕組み

住宅用太陽光発電

一般家庭では大体4~5kW程度の設置となりますので、余剰買取制度が適用されます。余剰買取制度とは、あまった電力を売電して収入にするもの。買取期間は10年で、一度決められた金額は変わりません。

この制度では、地域によって出力制御対応機器設置義務のあり・なしが決められており、北海道電力・東北電力・北陸電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力では設置を義務付けられています。

この出力制御対応機器設置の代金も考えて、売電価格は設置義務がないところよりも数円程高くなっています。

全量買取制度(産業用)の仕組み

産業用太陽光発電

全量買取制度では、電力会社から電力を買いながら発電した電力を全て売電。買取期間は20年と長くなっています。

10kw以上の設置となると、アパートやマンション、工場や空き地といったかなり広いスペースが必要になりますので、それらの物件や土地を持つオーナーもしくは法人しかできません。

売電価格は余剰買取制度よりも高く設定されているので、売電収入も高くなります。しかも、法人向けの「グリーン投資減税」および「生産性向上設備投資促進税制」といった税制優遇もあります。

余剰買取制度(住宅用)の仕組み

一般家庭では大体4~5kW程度の設置となりますので、余剰買取制度が適用されます。余剰買取制度とは、余った電力を売電して収入にするものです。買取期間は10年で、FIT認定時に決められた売電価格は期間中ずっと変わりません。

全量買取制度(産業用)の仕組み

10kW以上の太陽光発電が選べる全量買取制度では、発電した電力を全て20年間売電できます。家につける場合でも、10kW以上の容量があれば産業用に区分されます。

固定価格買取制度を受けるために必要な認定手続き

固定買い取り制度を適用させるには、買取対象設備である事を国に申請し、法令で定める要件に適合しているかどうかの認定を受けなければいけません。

認定基準については太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスとそれぞれに異なり、認定が下りるまでには1~2ヶ月ほどの期間がかかります。特にバイオマス発電は時間がかかるものとなっています。

再生可能エネルギー賦課金の金額はどうやって決められているの?

再生可能エネルギー賦課金

再生可能エネルギー賦課金は、電気を使うすべての人が負担しなければいけないもので、電気料金の一部に組み込まれています。金額は電気の使用量によって異なり、たくさん使うほど再生可能エネルギー賦課金も金額が大きくなります。

単価は、経済産業大臣を中心として毎年決められ、全国一律になるように調整されます。買取価格だけでなく、年間でどれくらいの再生エネルギーが使われるのかを予測して金額を決定します。

実際の数値が推測した数字と差があるようであれば、それは翌々年の調整時に反映されます。再生可能エネルギー賦課金は、再生可能エネルギーの普及を願ってできました。普及がすすめばエネルギー自給率も高くなり、化石燃料などの利用も減り環境にも貢献できます。

住宅用(10kw以下)の売電価格は?

住宅用(10kw以下)の太陽光発電

10kw以下の住宅用売電価格は年々下がっている

売電価格は年々下がってきており、住宅用でいうと下記のような下がり具合になっています。

年度 売電価格 出力制御対応機器なし
2016年 33円/kWh 31円/kWh
2017年 28円/kWh 30円/kWh
2018年 26円/kWh 28円/kWh
2019年 24円/kWh 26円/kWh
2020年 21円/kWh 21円/kWh
2021年19円/kWh 19円/kWh
2022年17円/kWh 17円/kWh
2023年16円/kWh 16円/kWh

出力制御対応機器とは、電力の供給が消費よりも多い場合に、発電を止められるよう操作できる機能を持つことです。

対象エリアにおいては、2015年4月以降の設置分に対して出力制御対応機器の設置が義務となり、対応しているかどうかで価格が大きく変わるものとなっていました。

2020年度以降は、制度変更により出力制御対応機器の有無にかかわらず売電価格は統一されています。

出力制御対応機器の設置義務エリア

・北海道電力・東北電力・北陸電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力

売電価格が下がる理由

売電価格が下がる理由

毎年、売電価格が下がる理由としては、太陽光発電を導入しやすくする為に固定価格買取制度といったお得な制度を設けたからです。固定価格買取制度や太陽光発電の技術向上からも普及がすすみ、パネルの価格も下がってきています。

金銭面の負担も数年前と変わってきているので、売電価格をいつまでも高い金額で設定しなくてもいいと判断されたのです。つまり、売電価格は下がってきてはいるけれども、トータル的な金銭面の負担はあまり変わっていないのです。

産業用(10kw以上)の売電価格は?

産業用(10kw以上)の太陽光発電

産業用太陽電池への固定価格買取制度の売電価格は、下記のような流れを見せています。

年度価格
2016年24円/kWh
2017年21円/kWh
2018年18円/kWh
2019年14円/kWh
2020年12円・13円/kWh
(13円は余剰売電/地域活用案件)
2021年11円・12円/kWh
(12円は余剰売電/地域活用案件)
2022年10円・11円/kWh
(11円は余剰売電/地域活用案件)
2023年9.5円・10円/kWh
(10円は余剰売電/地域活用案件)

10kW以上の産業用太陽光発電の売電価格は、住宅用よりも安く税別の金額となっています。

2012年から始まった、産業用太陽電池への固定価格買取制度

太陽光発電の売電制度を国として設けたのは、2009年からです。制度が確立されるまでは、発電所ごとに電力会社が買取をしていました。単価は系統電力と同じぐらいであったことからも、魅力を感じる人が少なく、普及を促すほどのものではありませんでした。

そうしたことから、2009年から2012年の間に、住宅用・家庭用で高めの売電料金が設定され一気に普及がすすみました。世界でも設置率が上位に入ったほどです。

特に2012年は、産業・事業用の太陽光発電においても固定買取制度が適用されることとなり、設備容量の大きさをぐんと伸ばしています。

固定価格買取制度の売電期間が終わったあとは?

固定価格買取制度が終了したら、どのように対処すればいいのでしょうか。この段落では、住宅用太陽光発電の10年後や、産業用太陽光発電の20年後について解説します。

新たな売電先と契約する

見積り

固定価格買取制度が終了した場合でも、売電を希望するなら新たに電力会社と個別契約する方法があります。固定価格買取制度が満了した太陽光発電の電気を買取る業者が多くあるのです。

住宅用太陽光発電の固定価格買取制度は、はじめは「余剰電力買取制度」として2009年にスタートしました。買取保証期間が10年と定められ、2019年には10年を迎えた設備から買取が終了するシステムです。

2019年度にFITの売電権利を失った設備は卒FITと呼ばれ、電力会社はさまざまな買取プランを提供し、余剰電力を買い取っています。FITの後の売電が定かでなかった「2019年問題」は解消されたと捉えて良いでしょう。

全量売電の太陽光発電に対しても、同様の流れが起こります。なぜなら、世界のビジネスはすでに脱炭素・環境志向に流れが向いており、再生可能エネルギーの電力を使いたい大手企業が溢れているからです。

卒FITの売電はどうなる?

卒FITの売電

たとえば、東京電力では「8.50円/kWh」で卒FIT余剰買取を行なっています。企業と連携したプランを提供している電力会社もあり、イオンと提携した中部電力では「WAONプラン」を発表しました。これは、売電した量に応じてWAONポイントが付与されるものです。

固定価格買取制度を終了する人向けのプランは、それぞれ特徴も異なります。契約内容をよく吟味して、自分に合ったものを選ぶといいでしょう。

自家消費

自家消費

太陽光発電システムで発生し貯めた電気は、固定買取制度で売電せずに、自家消費する方法もあります。電気代は年々値上がりしているため、売電するよりも自家消費するほうがお得です。

たとえば、家庭用蓄電池やエコキュートなどを利用すれば、電気を自家消費することが可能になるのです。機器の設置費用は年々下がっているので、自家消費するために導入しやすいといえるでしょう。昼間に発電した電力を蓄電池に貯めて使用すれば、電気代の節約になり、停電などの非常時にも役立てることができます。

2023年のFIT制度について

家庭用設置費用

2023年の固定価格買取制度では、低圧の太陽光発電で全量売電ができなくなる大きな変化があります。

  • 10kW以上50kW未満→FIT全量売電が不可能(例外あり)
  • 50kW以上250kW未満→FIT全量売電が可能
  • 250kW以上→FIT全量売電が不可能
住宅用
:自宅の屋根に10kw未満設置
16円/kWh
産業用(余剰売電のみ)
:工場等の屋根に10kw~50kw未満設置
10円/kWh
産業用(全量売電)
:土地等に50kW以上~250kW未満設置
9.5円/kWh

10kW未満住宅用太陽光発電の変化

また、住宅用太陽光発電では出力制御対応機器設置義務の有無による価格差をなくし、16円/kWhに統一されました。

10kW以上太陽光発電のうち「全量売電」での変化

10kW以上50kW未満の低圧太陽光発電は、地域活用要件を満たさなければFITが使えません。地域活用要件をざっくりとまとめると「自家消費できること」です。

ただし、50kW未満のソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)のうち、10年間の一時転用が認められる案件については、災害時に活用する機能があれば全量売電が可能となりました。

250kW以上の太陽光発電は入札制度の対象となり、売電価格は入札まで確定できません。

今後の国の政策について 

光熱費

すべての国民に課せられている「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は、年々大きく増加する傾向にあります。それに伴い消費者の負担が増加している、という課題があることは見逃せません。

このような背景から、負担を軽減するために家庭用蓄電池への補助金を充実させるなど、充電設備の普及を促す動きがあるのではないかとの予想がなされているのです。

また、2020年6月に「FIP制度」の導入が決まり、2022年4月からスタートしました。

FIP制度とは?

FIP制度とは、再生可能エネルギーの発電事業者が売電する量に応じた「割増金(プレミアム)」を、市場価格に上乗せして販売する制度のことをいいます。

外国での実績を見ると、この割増金には「固定型」「上限・下限付きの固定型」「変動型」の3種類があります。

FIP制度自体は今後の選択のひとつとして議論されているので、決定されたわけではありません。今後の固定買取制度について、どのような議論や決定がなされるのか、最新の情報をチェックしておく必要があるでしょう。

固定価格買取制度を活用したいなら早めの導入を!

太陽光発電の導入一括見積タイナビ

太陽光発電の売電価格が今後もどんどん値下がりしていく事はほぼ確実ですが、引き下げられるのは「導入時の売電価格」なので、契約後に引き下げられることはありません。ですから、早めに導入・契約をしてしまったほうが高い売電収入を得る事ができます。

太陽光発電の導入を促進するために、2012年7月からスタートした固定価格買取制度。一般家庭では余剰買取制度が適用されていますが、その売電価格は年々下がってきています。売電収入も考えているのであれば、早めの導入が必要と言えます。