住宅用の太陽光発電が、いよいよ自家発電の時代に入ります。
家庭の屋根で発電した太陽光の電気を10年間、固定価格で売電できるFIT制度(固定価格買取制度、余剰電力買取制度)。
この制度が始まった2009年に、太陽光発電を始めた世帯は約53万。制度が始まった初期に売電を始めた太陽光発電設備は、買取期間を順次終え、多くの家庭が不変の価格で余剰売電できる権利を失いました。
FIT制度満了後はユーザーが売電先を選ぶことになりますが、買取価格は格段に安くなるため、電気料金の節約に舵を切る自家消費型のライフスタイルに変わる選択が求められています。
太陽光発電のスタイルが売電中心から自家消費中心に変わるとき、太陽光発電の電気をどう使えば効率が良いでしょうか。
その答えのひとつが、電気自動車と合わせて電気を活用する蓄電システムです。
すでに太陽光発電を始めている方はもちろん、電気自動車や蓄電池も合わせて検討している方に役立つ情報をご紹介します。ぜひ目を通して、将来の太陽光発電の使い方をイメージしてみてください。
太陽光発電の使い方を急変させる「卒FIT」への対応
FIT制度で定められた10年間の売電期間を終えた太陽光発電は「卒FIT」という括りに入ります。
売電先は今までの電力会社でも良いですが、新電力を自分で選ぶことも可能です。いずれにしても、問題となるのは売電価格が急激に安くなること。たとえば、東京電力が卒FITの余剰電力を買い取るときの価格は8.5円/kWhです。(2020年5月時点)
どの大手電力会社、新電力を選んでも、売電価格にそれほど大きな違いはありません。卒FITの太陽光発電で発電した電気は、売って得するものから、自分で使って得をするものに変化したのです。
電気を自分で使ったほうが得とは?
太陽光発電の電気を売るべきか、使うべきか。簡単に判断する方法がこちらです。
- 売電価格>電気料金 のときは、自家発電した電気を売ったほうが得
- 売電価格<電気料金 のときは、自家発電した電気を使ったほうが得
電力会社の電気料金プランと卒FITの売電価格を見比べて、どちらが安いか見てみましょう。東京電力の従量電灯Bの電気料金は、以下のようになっています。
【東京電力の従量電灯Bの電気料金】
最初の120kWhまで | 19.88円/kWh |
---|---|
120kWhをこえ300kWhまで | 26.48円/kWh |
300kWhを超過 | 30.57円/kWh |
卒FITの売電価格が8.5円/ kWhですので、売電するよりも買電価格のほうが高いことがわかります。つまり、売電するよりも余剰電力を自宅で使うほうが経済的なメリットが大きいといえるのです。
太陽光発電の電気を自家消費する3つの方法
太陽光発電の電気を自家消費するパターンは、大きく分けると「家庭内での消費」「蓄電池への充電」「電気自動車への給電」の3パターンです。
太陽光発電の電気をこのように使うと、以下のメリットが得られます。
- いつもの電気代を節約できる
- 停電になっても発電した電気が使える
- ガソリンよりも燃料費が安くできる
しかし、家庭内での消費は、ライフスタイルによっては難しくなります。
- 電気自動車を日中に使うと充電できない
- 太陽光発電の電気を蓄電池やV2Hスタンドで使うときに電力がロスされる
- 多種多様な機械を使いこなせる人が少ない
ニチコンが2018年にリリースした「トライブリッド蓄電システム™」は、太陽光発電で発電した電気を蓄電池・V2Hスタンドにつなぐ世界初のシステムです。
電気自動車の燃料費は太陽光充電で最安になる
ニチコンのトライブリッド蓄電システムは、電気自動車(EV車)の燃料費を最小限にできます。
それでは、ガソリン車と電気自動車で、年間12,000km走行するときのエネルギーコストを比較してみましょう。まずは、電気自動車に充電する電気を電力会社から購入する一般的なケースについて、みていきます。
ガソリン車 | 燃費 12km/L(※1)×ガソリン代 140円/L(※2)=140,000円 |
---|---|
電気自動車 | 電費 10km/kWh(※3)×電気代 17円/kWh(※4)=20,400円 (太陽光発電で全量充電すれば、年間エネルギーコストは0円に!) |
※1 ガソリン車の燃費を12km/Lとした場合
※2 経済産業省 資源エネルギー庁 石油製品価格調査(2018年2月)を参考
※3 日産 新型リーフ(JC08モード)の場合
※4 東京電力 スマートライフプラン(深夜料金)
1日1時間以上車を走らせる場合、電気自動車の燃料費(電気代)のほうが安くなることがわかります。充電に深夜の電気が安い電気料金プランを使うと、ガソリン車と比べて10万円以上も安いコストで走れるのです。さらに、太陽光発電の電気を電気自動車に給電すると、エネルギーコストを0円にすることも可能になる(※)のです。
※ 天候や家庭の電気使用量によっては0円にならない場合があります。
卒FITの太陽光発電は蓄電すると電気代が安くなる
蓄電池は、一般的にオール電化向けの電気料金プランを契約し、夜間の安い電気を蓄電して昼間に使います。卒FITの太陽光発電と組み合わせる場合、太陽光で発電した電気は蓄電して使うほうがお得です。
太陽光発電の電気を売電するか自家消費するか決めるときは、売電価格と電気料金プランの価格を見比べて判断します。再び、東京電力の夜の電気代が安いプランと卒FITの売電価格を比較してみましょう。
夜間電力と卒FIT、どっちを使うと得? 東京電力で比較
東京電力「夜得プラン」の夜間の電気代が12.48円/kWhであることに対し、卒FITの売電価格8.50円/kWh。つまり、日中に電力を貯めて深夜に使うほうが、売電するよりも経済的なのです。
電気料金は電力会社や料金プランによって異なるため、夜間電力料金と卒FIT向け買取価格を比較して、より安い電気を多く使う生活スタイルにすることで経済的なメリットが大きくなります。
蓄電池と電気自動車どっちで蓄電するべき?
蓄電池と電気自動車について、それぞれのメリットとデメリットを以下にまとめました。
【蓄電池のメリット】
- 場所を取らず、コンパクトで室内に設置できるものもある
- 電気自動車ほど高額ではない
【蓄電池のデメリット】
- 容量が限られている
【電気自動車のメリット】
- 二酸化炭素の排出がなく環境に優しい
- 災害時に使用できる電力が大きい
- 停電していない地域で充電して蓄電池として使える
【電気自動車のデメリット】
- 蓄電池としては高額
- 充電に時間がかかる
蓄電池は電気自動車よりもコンパクトで、蓄電池単体なら電気自動車よりもコストがかかりません。必要な数の車をすでに持っている場合は、電気自動車を新たに購入するよりも蓄電池の導入がおすすめです。
一方、蓄電容量の大きさでは電気自動車のほうが優れています。家庭用蓄電池で同時に使用できる合計電力は1500Wです。それに対し、電気自動車のリーフでは約4倍の電力を使用可能なため、停電時でもふだんとほぼ同じように電気を使えます。
電気自動車は、非常時でも停電していない地域の充電スポットまで行って充電すれば、自宅で電気を使える点も安心です。ただし、電気自動車は充電に時間がかかる点がデメリットで、充電だけで半日~1日かかる場合もあります。
蓄電池と電気自動車のどちらを使うべきかについては、ユーザーの環境により、ケースバイケースです。以下の記事でくわしく比較をしているので、参考にしてください。
充電を全て太陽光発電でまかなう場合に必要な発電出力や屋根の面積
ここでは、全量を太陽光発電でまかなう場合に必要となる発電出力や屋根の面積について説明します。
必要な発電出力は?
日産リーフのバッテリー容量は40kWhあり、家庭で太陽光発電システムから充電する場合、目安として4〜7時間かかります。また、家庭用太陽光発電システムの平均的な発電規模は5kWで、それを導入した場合、1日の発電量の目安は16kwhです。
消耗した分だけを毎日充電して補うことができればよいので、一般的に必要な太陽光発電システムの発電出力は5kW程度といえるでしょう。
電気自動車を頻繁に使用する場合は、太陽光発電によって充電にかかる電気代を削減できます。また、電気自動車を車として使わない時間は、蓄電池として家庭における電気代の節約を促進することが可能です。
必要な屋根の面積は?
発電出力5kWの太陽光発電システムを導入する場合、5kWを出力するためには1枚あたり面積1.2平米のソーラーパネルが25枚必要です。つまり、必要な設置面積は最低でも約1.2平米×25枚=30平米です。
屋根だけでは設置面積が足りない場合は、カーポートも太陽光発電に利用することができます。
プリウスの一部モデルは車へソーラールーフを設置して車内のエアコンを動かす「ソーラーベンチレーションシステム」を搭載しており、出力の公表値は平均56Wです。これによってエアコンにかかる電気コストを減らせる可能性はあるでしょう。しかし、車の屋根に付いた太陽光発電システムだけで、家庭に必要な電気の全量をまかなうのは難しいとされています。
太陽光発電で電気自動車を充電するときの重大な問題
電気自動車を日中に運転する方は、通常、太陽光発電システムでは充電できません。
朝から電気自動車で出かけると、太陽光発電が発電している間に充電器に繋げないのです。そのため、電気自動車を太陽光発電で充電できるのは、基本的に在宅しているか、週末にしか車に乗らない人などに限られていました。
この問題を解決したニチコンの蓄電システムは、太陽光発電の電気をまずは蓄電池に溜めます。電気自動車が帰宅してから、蓄電池の電気を電気自動車に移すのです。こうして、夜に帰宅する電気自動車を、昼間に発電した電気で走らせることに成功しています。
ただ、電気はいくつもの機器を移動させると変換ロスが起こり、少しずつ量が減っていってしまいます。これを、太陽光発電から蓄電池、電気自動車のバッテリーまでをひとつのシステムとして連携させるという、画期的な方法で解決しました。
自家発電した電気をムダにせず、蓄電池や電気自動車、そして家庭に行き渡らせることができるということです。
ニチコンは、電気自動車の電力を家庭に供給できるV2Hシステムを世界で初めて開発したメーカーです。電気自動車の充電・給電システムと蓄電池の開発力に強みを持つニチコンが、太陽光発電とこれらの機器を連携させるシステムを発売するにいたりました。
この蓄電システムを使うには、太陽光発電システムのパワーコンディショナと蓄電池、V2Hのメーカーをニチコンで統一することになります。それぞれの機器や電力の管理が効率よくなりますが、格安な海外製が使えないことがデメリットに感じるかもしれません。
3つの役割を包括するトライブリッド蓄電システムは、利便性と家計へのメリットを高める方向へ高性能化したシステムだといえるでしょう。
太陽が出ている間は車庫から出せない?!充電時間の問題点
太陽光発電システムから電気自動車に充電する場合、太陽が出ている日中に長時間にわたる充電が必要となるため、車に乗りたいタイミングに乗れないというケースも出てきます。
この問題を解決するのが、ニチコンの「EVパワー・ステーション」です。200V/3kW出力の普通充電器と比較して、最大2倍のスピードで充電ができるため、普通充電器なら半日〜1日かかっていた充電時間を、およそ半分に短縮することができます。
「EVパワー・ステーション」を導入すれば、帰宅後に充電する場合でも翌朝まで待たずに車が使えます。
ニチコンの蓄電システム価格
太陽光発電システムをすでに設置している方が電気自動車を新たに購入する場合、蓄電システムとして「トライブリッドパワコン」「蓄電池」「V2H」などの機器を追加するケースが一般的です。それぞれの価格を以下にまとめました。
- トライブリッドパワコン(ESS-T1):110万円(税別)
- 蓄電池ユニット(ESS-BS):90万円(税別)
- V2Hスタンド(ESS-V1):110万円(税別)
これらの蓄電システム機器を導入する場合は、電気自動車の価格とは別に上記の費用、合計で310万円(税別)も必要になります。また、最初は最低限の蓄電システムで使い始め、家族が増えるなど電気の使用量が増えたときに、蓄電池を増設する方法もあります。
いずれにしても初期費用としては高額なため、電気代やガソリン代などと比較して、本当にお得になるかどうか収支シミュレーションをするとよいでしょう。
ニチコンの蓄電システムを安く購入するには?
ニチコンの蓄電システムの価格は決して安くはないため、できる限り安く購入したいと考えるは当然です。そのため、購入を検討するときは、取り扱いのある複数の施工店から相見積もりを取りましょう。
複数の施工店から見積もりを出してもらうことによって提示価格を比較でき、割高な価格で購入してしまうリスクを回避できます。さらに、複数社を比較すれば各施工店のサービスや実績なども確認できるため、購入を検討する材料の1つとしても役に立つでしょう。
FIT終了後は自家消費型の太陽光発電に切り替えよう
ニチコンの蓄電池や電気自動車を導入することにより、電気の自家消費を促進することができます。
太陽光発電システムの機材を買い換えるタイミングは、「10年目」が目安です。太陽光発電システムの寿命は長いものの、機器によって耐用年数に差があります。最も寿命が短いパワーコンディショナの寿命は、およそ10年です。
FIT期間が終わる10年目が、太陽光発電を自家消費型に変える絶好のタイミングといえます。タイナビはこれからも、自家消費型の太陽光発電に役立つ情報についてお伝えしていく予定です。
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