太陽光発電システムを屋根に設置すると、遮熱効果が得られることを知っていますか?
本来、太陽光発電は電気を作るために設置するものですが、実は屋根に設置すると「夏は涼しく、冬は暖かい」という快適な住環境作りにも役立ってくれるのです。なぜ太陽光発電にこのような効果があるのでしょうか。
この記事では、太陽光発電に期待できる遮熱効果について解説しつつ、それによる具体的なメリット(夏場・冬場)についても紹介します。
遮熱効果って何?意味と仕組み
そもそも「遮熱効果」とは、人が感じる熱の放射を室内に入れないことをいいます。
例えば、高性能の日傘や車の窓に貼るフィルムは、あるのとないのとでは、中にいる人の体感温度が大きく変わります。
これは遮熱効果のある素材によって、内側に熱を通さない状態が作られているからです。
「遮熱効果」と似たような意味を持つ言葉に「断熱効果」がありますが、熱を通さない「遮熱」に対して「断熱」は外部から室内に伝わる熱量を小さくすることを指します。
「遮熱」と「断熱」は混同されがちな言葉ですが、実際の意味には大きな違いがあります。
光を通さない不透明な壁であれば、断熱も遮熱もできますが、光を通す透明なガラスの場合は、断熱はできても遮熱はできません。これは、太陽光の反射による熱がガラスを通して室内に伝わってしまうからです。
実は、夏涼しく、冬は暖かい状態を作るには、断熱だけでは不十分。本当の意味で最適な住環境を作るためには、夏は遮熱で熱の侵入を防ぎ、冬は断熱で熱を逃がさないようにするのがポイントになります。
太陽光発電システムによる遮熱効果
太陽光発電システムには、遮熱効果が期待できます。それでは、太陽光発電システムを設置すると、住環境の面で具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
夏場、冬場それぞれの場合について見ていくことにしましょう。
夏の場合
太陽光発電システムを屋根に設置すると、そうでない場合より夏の室内が涼しくなることがあります。それは、屋根から入ってくる熱を、太陽光発電システムがある程度シャットアウトしてくれるからです。
夏場に室内温度が上昇する原因の1つは屋根からの熱です。
夏場の屋根の表面温度は、何も設置していない場合で約70℃、屋根の裏側(野地板裏面)の温度は49.32℃にも達します。
2階建て住宅で、1階よりも2階の方が暑いのも、屋根に近い分、屋根からの熱の影響を受けているためです。
ところが、太陽光発電システムを設置している場合は、パネルが直射日光を遮ったり反射させたりするため、屋根裏の温度は38.4℃程度まで下がります。太陽光パネルがあるかないかで10.92℃以上の差が出ることになるのです。
これは、室温にして、2~5℃の差に相当するといわれています。
2~5℃室温が下がれば、エアコンの設定温度もかなり変わりますし、気温によってはエアコンそのものが不要になるケースもあるかもしれません。結果的に、夏も涼しく過ごしやすくなりますし、エアコンによる電気代の増加も抑えられます。
冬の場合
太陽光発電システムがあると、冬場は暖かく過ごせます。これは設置されたパネルが放射冷却(※)を防ぎ、結果的に室内から熱が逃げづらくなるためです。
※放射冷却……日中に太陽光で温められた熱が夜になって逃げていくこと
確かに、太陽光発電を設置すると、屋根への直射日光の熱が遮熱されて、太陽が出ている間の室温は低くなります。これでは、「冬暖かい」という住環境を作るためには逆効果と感じられる人もいるかもしれません。
しかし、太陽光のパネルは外からの熱をシャットアウトしてくれるだけでなく、室内の熱が放射冷却によって逃げることも防いでくれます。その結果、一番気温の低い夜中から朝方の室温を高く保つことができるのです。
例えば、冬場の屋根の表面温度が-5℃の場合、屋根裏(野地板裏面)の温度は、太陽光発電が未設置で8.12℃、設置で13.35℃です。
なんと太陽光パネルがあるだけで、室温が5.23℃も高くなるのです。
遮熱効果・放射冷却防止で得られる節電効果
ここまで紹介してきたように、太陽光発電システムには遮熱効果や放射冷却防止効果が期待できます。
そのため、太陽光発電システムを屋根に設置していると、していない場合に比べてエアコンの設定温度を高く(または低く)設定でき、結果的に電気代の節約につながりそうです。
夏場に冷房の設定温度を高くした場合
太陽光発電システムの遮熱効果を利用することで、夏場の冷房代を節約できる可能性があります。遮熱効果で室温が低くなれば、気温が低い朝晩は冷房の使用をやめたり、設定温度を上げたりすることもできるからです。
例えば、夏場に冷房の設定温度を27℃から28℃にした場合、月間の省エネ効果は200円といわれています(外気温度31℃、2.2kWのエアコンを1日9時間使用した場合)。
さらに28℃で1時間使用時間を短縮すると、月間省エネ効果は130円。
これを何年も続ければ、何千円、何万円もの節約になります。
冬場に暖房の設定温度を低くした場合
太陽光発電システムを設置することで、冬場もよりエコに、快適に過ごせる可能性があります。
放射冷却防止効果によって朝晩の冷え込みが強い時間帯に室温が上がるため、暖房を使う時間を短くしたり、設定温度を下げたりといったこともできるようになるからです。そのことは結果的に、暖房代の節約にもつながります。
例えば、エアコンを使う場合で、暖房の設定温度を21℃から20℃にすると月間の省エネ効果は230円になります(外気温度6℃、2.2kWのエアコンを1日9時間使用した場合)。さらに20℃で1時間使用時間を短縮すると、月間省エネ効果は180円。
しかも、節約できるだけでなく、電気や灯油などの使用量も減るため、CO2の削減にもなります。
遮熱効果をより高める太陽光発電とプラスαの組み合わせ
太陽光発電には、屋根の遮熱効果が得られるという嬉しいメリットがあることが分かりました。
さらに、遮熱効果を高め、エコで住みやすい住環境にするためには、太陽光発電システムに加えて、次のようなアイテムを活用するのがおすすめです。
太陽光発電+遮熱フィルム
窓から出入りする熱をシャットアウトするために、窓に遮熱フィルムを貼ってみましょう。
窓は、家の中で一番熱の出入りが激しい部分だといわれています。熱の出入りのうち、約48%は窓からというデータもあるほどです。
そこで、活用してほしいのが窓用の遮熱フィルムです。
ガラスに貼るタイプの遮熱フィルムはガラスの透明度を保ちつつ、赤外線を反射して窓際の熱の侵入を緩和したり、室内から暖かい空気が放熱するのを低減したりする働きがあります。窓に遮熱フィルムを貼るだけで、約20%の省エネが可能です。
太陽光発電+遮熱カーテン
「遮熱フィルムを部屋の窓に貼るのが大変」「もっと手軽に遮熱効果を得たい」という人は、遮熱カーテンを活用してみましょう。
大きな室温の変化は見られないものの、窓際の温度が数度違うだけで、エアコンの効きは変わります。手軽な方法ながら、しっかり節電効果は得られるはずです。
省エネ目的で遮熱カーテンを使う場合、昼間の日光からの赤外線を遮ることが主な目的になります。したがって、光を室内に通すために、部屋の内側にかけるような厚手のカーテンではなく、外側のレースのカーテンに遮熱効果のあるものを取り入れるのがおすすめです。
太陽光発電システムの2つの節電効果を活用しよう
太陽光発電を導入することで、電気の自給自足による節電ができることは広く知られています。しかし、太陽光発電システムを導入するメリットはそれだけではありません。
今回紹介したように、遮熱効果によって、夏の暑さや冬の寒さを緩和し、エアコンにかかる電気代も削減できます。CO2削減に貢献しつつ、家計も節約したい人にはおすすめです。
しかし、太陽光発電は高価な製品な上、屋根の形や住宅に合わせたオーダーメイドのようなもの。導入に失敗しないためにも、複数の会社に見積もりを依頼し、またきちんと下見をしてもらうことが重要になります。
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