ソーラーハウスとは、暖房や給湯などに使われるエネルギーを太陽熱でまかなえるようにした家のことであり、採光や通風を考えた設計・間取りが必要な「パッシヴ・ソーラーハウス」と、専用の機器を揃える「アクティヴ・ソーラーハウス」の2つに分けられます。

多くの人が知っている太陽光発電システムは後者のアクティヴ・ソーラーハウスになり、最も身近な太陽熱の利用法と言えます。

ソーラーハウスとはどんな仕組みをもつ家?

太陽の熱と光を効果的に利用できるように設計されるソーラーハウス。一戸建住宅で採用されることが多いですが、集合住宅や事務所ビル、学校、病院など、あらゆる建築で採用されています。

窓を通して太陽の熱と光を取り込みやすくするのをはじめ、集熱や蓄熱、室内の熱環境や光環境の改善をおこない、電気やガス、石油などによるエネルギー活用を削減していきます。

パッシヴ・ソーラーハウスは太陽熱の利用から始まりました。夏場の冷却効果や遮熱効果を考えたパッシブクーリング、風のもつ気候特性や地域特性、建物の構造を考えたバイオクリマティックなども含まれています。

太陽熱を最大限に利用するパッシヴ・ソーラーハウス

「パッシヴ」とは、英語で「受動的」という意味があり、大規模住宅で南側に大きな窓を設置しているのが特徴。断熱性を高め、太陽熱をため込むことができるようにしているのです。魔法瓶と似たような働きを持つといわれており、太陽熱を維持する性能に優れています。

天気が悪く日が差さない時には補助暖房設備などがサポートしますが、断熱がよいので維持費は安くすみます。もちろん、夏は冷房装置が作動し、この場合も断熱性能が高いので冷房の効きを維持するのも低額ですみます。

すべての部屋が同じ温度になるので、どの部屋でも快適に過ごせます。保守費用はほとんどかからず、維持費用としては送風機ぐらいです。蓄熱機は南側の窓の内側に置かれますが、これをトロンプ壁と呼んでいます。

パッシヴ・ソーラーハウスで欠かせない仕組み

太陽熱を吸収し逃がさないパッシヴ・ソーラーハウスは、太陽の動きに合わせて送風機の起動や停止をコントロールします。調理はガスではなく電気でおこない、換気は最小限に抑えます。

サポートとしての空調装置はFF式暖房機やヒートポンプだけを使用し、ガスストーブや石油ファンヒーターは使いません。お風呂の換気には熱交換器付きの同時吸排気方式のものを使い、トイレは人の出入りで感知して動く時限式換気扇を。

長時間かかるもので必要のない排気は、徹底して抑えているのです。

パッシヴ・ソーラーハウスの代表的なタイプ

パッシヴ・ソーラーハウスには、いくつかのタイプがあります。南向きの窓から入ってくる太陽熱を、室内にある蓄熱性のある床や壁に蓄えさせる「ダイレクトゲイン」。

南側にガラス張りのコンクリート壁を作りそこに蓄熱させ、壁から赤外線となって家を暖める「トロンブ壁」。温室をつくり他の2タイプを合わせた様な仕様にする「グリーンハウス型」。植栽を使った冷却効果も含まれます。

小規模住宅に向いているアクティヴ・ソーラーハウス

「アクティヴ」とは、英語で「積極的」という意味であり、集熱装置を屋外に設置し、そこからいくつかの熱媒体を用いて熱を室内に入れ、それを蓄熱装置に蓄えます。蓄えた熱を屋内の放熱装置を用いて暖房などに使います。

パッシヴ・ソーラーハウスとは逆で、小さい家に向いています。使用する装置はコンパクトで床下や天井裏などに置くことができますが、保守が面倒。

水溶液を使う場合は水漏れや弁の腐蝕、集熱板の破損などが起こりやすく、空気を媒介するものでは強風時に空気導入切り替え装置が大きく損傷を受けることがあるのです。省エネを目的とした集熱装置としては、ソーラーシステムや太陽光発電システムなどがあります。

ソーラーハウスは家全体が快適空間

ソーラーハウスにすると、さまざまなメリットがあります。寒い冬には床暖房を、暑い夏には給湯に太陽熱を有効活用と、まさに快適そのもの。導入時に初期費用はかかりますが、長い目で見るとランニングコストを抑え、売電することでローコストとなります。

また、ソーラーハウスは空気がクリーンで、エネルギー消費による二酸化炭素の発生を削減するといったエコな面も持ち合わせています。

ソーラー蓄熱暖房とソーラー給湯

1年中、季節に合った温度と室温を調整するソーラーハウス。冬などの寒い日は、太陽の日差しが出ている際に、屋根のコレクターで温まった不凍液が床下のパイプを循環。夜から朝までの間に床暖房を使えるように備蓄しておきます。

これを、ソーラー蓄熱暖房と言います。雲の多い日や雨の日などの天気が悪い日は、補助ボイラーを使って床の蓄熱温度を確保。自動運転でコントロールするので、操作などの必要はありません。

暖房がいらない暖かい日は、太陽熱でお湯を沸かし、お湯にはいれるように。冬でも天気がよければ暖房運転をしながらお湯を沸かすことが可能です。これをソーラー給湯といいます。

太陽光で暖房熱量をまかないコスト削減

地域による差はあるものの、年間に必要な暖房熱量の50~75%をまかなうといったデータがあります。特に4月~10月の給湯エネルギーのほとんどが太陽熱によるものです。

従来の石油やガスストーブ、灯油ファンヒーターなどの暖房機の使用、24時間の稼働はコスト的にも莫大なものとなります。ソーラーハウスにすることで暖房費が大きく下げられるのです。

さらに、高性能な建物、冷暖房費用を抑える工夫がプラスされることで、ランニングコストも抑えることも可能となります。

健康面、環境面の改善

24時間、家中の温度を一定に保つことが可能となるので、ヒートショックなどの健康被害がありません。しかも、年をとるほど寒さが厳しく感じるようになり、運動量も低下してしまいがちですが、ソーラーハウスであれば自然と活動できるようになります。

また、過剰な水蒸気の発生がないので湿度も快適に保たれます。ちなみに、世界保健機構(WHO)は30%~60%としています。温度と湿度が一定に保たれているので結露も発生しにくく、シックハウスの原因となるカビやダニを大幅に低減。

アトピーや喘息の原因となるダニが抑えられます。あるデータでは、暖房を使用しているときに発生するダニの数が、一般的な住宅に比べて少ないといった計測結果もでています。しかも、ダニだけでなくカビの発生もおさえるものとなります。

ソーラーハウスは設置費用が高い

ソーラーハウスは快適な空間を作るのに適した住宅システムではありますが、費用が高くなるといったデメリットがあります。光熱費や暖房費用、メンテナンスでは費用がかかりませんが、初期費用で大きな負担がかかるものとなります。

また、家のデザインにおいても合わせる必要があります。例えば、太陽エネルギーを取り込むためのコレクターを屋根につける際に、屋根の形状はもちろん方向なども合わせなくてはいけなくなります。

ソーラーハウスはエコなエネルギー活用法です。太陽光を利用し、家全体を夏は涼しく冬は暖かく、24時間過ごしやすい空間を保ちます。しかも、ダニやカビなどの発生も少なく、ヒートショックといった健康被害もおこりません。

自然の光を利用するのでメリットは多いといえますが、設置費用が高くなるといったデメリットも理解しておかなくてはいけないのです。