ニューヨークの道路

太陽光発電は、建物の屋根や空き地などに設置するのが一般的です。ソーラーパネルをたくさん設置するには広い土地が必要ですから、価格が安い郊外エリアにソーラーパネルが集中してしまいます。結果、景観が損なわれてしまいます。また、電気を遠くから運ぶと、徐々に電気が失われてロスが生じます。

ソーラーパネルによる景観破壊と送電ロス。この2つを解決する方法として、「道路で太陽光発電する」という方法が注目されています。

道路で太陽光発電は奇抜なアイデアに思えますよね。しかし、この発電方法は新しい太陽光発電のスタイルとして、欧米を中心に開発や実験がすでに行われているのです。

アメリカの高速道路をソーラーパネルにする実証実験がスタート!

アメリカのミズーリ州

最初にご紹介するのは、アメリカのミズーリ州で進められているソーラーロードの実証実験です。

アメリカのミズーリ州にある旧国道66号線といえば、広大な国土の東西を結ぶアメリカの代表とも言える道路です。アメリカの発展を支え続けた高速道路は、建設から60年が経過。 老朽化への対応と新時代の道路システムを模索するため、「ROAD TO TOMORROW」プロジェクトが進められています。ソーラーロードは同プロジェクトの一環として、道路にソーラーパネルを埋め込む試験的な取り組みです。

道路で発電した電気は、街灯や信号機、電気自動車を充電するために使えます。さらに、新時代の道路機能として、ヒーターとLED電球を搭載。ハイテク化した道路には多くの電気が必要ですが、必要な電気をその場で発電することで、送電時の電力ロスを抑えることができます。

アメリカの高速道路を全てソーラーロードにした場合、国内で必要な電気エネルギーのすべてをカバーできるとのこと。ソーラーカーの普及を後押しすることにもつながり、CO2の大幅な削減も目指せます。石油資源の枯渇や、原子力発電所などの事故リスクを解決することにもつながります。

大型車が走っても太陽光発電は無傷ってどんな構造?

「Road to Tomorrow」のソーラーロードに使われるのは、強化ガラスを使用した多層型のモジュール(組立ユニット)。六角形に加工されたパネルをパズルのように組み合わせて、道路を形成します。この特殊なソーラーパネルを開発したSolar Roadways(ソーラーロードウェイズ)は、エネルギー関連のベンチャー企業です。

このソーラーパネルは、試作品の段階でもトレーラーの牽引車が走れるほど丈夫とのこと。もし破損したパネルがあっても、その箇所を入れ替えるだけで対処できるので管理に手間がかかりません。

アスファルトと同じくらいの強度で維持管理費用を安くし、コスト削減効果をもたらします。

雪を溶かし、道路標識も変えられる高機能道路に進化

Solar Roadwaysの発電パネルは発電以外の機能を持ち、道路の使い方を大きく進歩させる可能性を秘めています。

ソーラーパネルにLED電球をとりつけ、光らせたり線を表示させることができます。道路に交通情報やデジタル式の標識を表示したり、表示内容を操作することも可能。耐圧センサーや対物センサーを組み合わせれば、シカやクマなど野生動物の侵入地点を特定してパネルを光らせて、運転者に注意を促すこともできます。

もっと身近な場面でも、たとえば駐車場で障がい者などの優先スペースが埋まったとき、通常スペースをすぐに優先スペースに切り替えて優先スペースの空きを確保することができます。 道や駐車場を、柔軟に運用できるようになるのです。

さらに、内部に組み込まれたヒートパネルで、道路の雪を溶かすことができます。除雪にかかる人的コストを減らし、利用者の利便性も維持できます。

この最先端の技術が成功すれば、生活スタイルに変化をもたらすだけでなく、州への収入源になると見込まれています。

欧州でもソーラーロードを開発中! 各国の事例をご紹介

欧米諸国でもソーラーロードの開発が進んでいます。オランダ、フランス、ドイツ、スウェーデンの例をご紹介しましょう。

オランダのアムステルダムは太陽光発電できる自転車専用レーン

オランダのアムステルダムには、2014年に世界初の太陽光発電を備えた自転車専用道路が完成しました。この道路はソーラーロードとも呼ばれ、太陽光電池パネルを強化ガラスで補強したコンクリート製のモジュールが使われています。

ソーラーパネル付き自転車専用道路に関する記事はこちら

この道路で作られた電力はすでに電力網に組み込まれていますが、将来的にはこの電力を街路灯に利用することも考えられています。今後はら電気自動車や電動自転車に対して電気を供給し、路面から直接充電できることも目指しています。

フランスは5年間で1000kmのソーラーロード建設を予定

フランスは、再生可能エネルギーの分野でも世界をリードする国の一つです。特に道路に太陽光発電を利用することにおいては世界で最も進んだ国とも言われています。

それをよく表すのが、2015年にパリで開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)に出展した太陽光発電道路(Wattway)です。

Wattwayはフランスを代表する道路建設会社のColas社と、太陽光発電の国立研究機関が共同で開発した太陽光発電道路です。この道路は多層構造の基盤に内蔵された太陽電池セルで構成されており、多結晶シリコンの薄いフィルムによって発電を行います。

このパネルは世界中どこの道路でも使用でき、大型トラックも含めたあらゆる自動車が走行できます。

パネルモジュール自体は厚さがわずか数ミリメートルと極薄でありながら、非常に頑丈にできています。舗装道路の上にそのまま装着できるため、大掛かりな道路工事は必要ありません。

この太陽光発電道路は20平方メートル分のパネルで家庭ひとつ分の電力(暖房用は除く)を供給することができるといいます。1キロメートルの道路にWattwayのパネルを敷き詰めると、住人5000人の街の街路灯に必要な全ての電力がまかなえることになります。

ドイツはどんな道路にも敷設できる高効率ソーラーパネルを開発

ドイツのベンチャー企業であるソルムーブ(Solmove)は2012年の創業以来、アーヘン工科大学やドイツ連邦道路交通研究所の協力を得て、道路での発電用にソーラーパネルの開発に力を入れてきました。

Solmoveのソーラーパネルの特徴は、四方八方から差し込む光をまんべんなく屈折させて、太陽電池に取り込む仕組みであること。そして、変換効率(太陽光エネルギーを電気エネルギーに変えられる割合)の高さです。

Solmoveの道路用ソーラーパネルの変換効率は10~15%で、これは屋根や空き地に取り付ける一般的な太陽光発電と同じくらい高い効率で発電できることを示します。

道路用の太陽光発電は地面に対して水平に設置されるため、一般的に変換効率が低いとされています。ドイツのような技術力の進歩によって、発電コストを下げることができるのです。

これは驚き!スウェーデンは走行中のハイブリッド車に電気を供給

ここまで、太陽光発電を道路で行おうとする国の事例を紹介してきました。意外と多くの国で、実証実験の段階にまで進んでいるのが驚きですよね。その中でも、スウェーデンの進歩ぶりは諸外国の一歩先を行くものです。

スウェーデンの電気道路(Electric Road)システムでは、走行中のハイブリッド車に電力を供給することができるのです。

この画期的なシステムは、世界で最も再生可能エネルギーの利用が盛んなスウェーデンが官民共同で作り上げた世界初のシステムです。スウェーデン中部にあるイエヴレ市で公開されました。

片側2車線のうち、外側の1車線上に電力供給用の架線が張り巡らされています。充電に対応できるトラックは屋根の上にパンタグラフを設置しており、走行しながら電力供給を受けることができるのです。電車の電力供給の仕組みと似ていますね。

この架線から電力を供給できるのは、スカニア(Scania)社が開発した大型ハイブリットトラックです。トラックの運転席の上部にパンタグラフを格納しており、それを伸ばして架線から電気を受けるのです。

リチウム充電容量が5kWhなら、充電が終われば最長3キロまで走行できます。なおトラックの総重量は9トンで排気量は9リットル。このトラックはスウェーデン製ですが、電力の技術はドイツのシーメンス社が開発したものです。

海外の太陽光発電道路から学べること

いかがでしたか? 欧米各国が開発に力を入れている「太陽光発電道路」には少なからず驚かされたのではないでしょうか。

なかでも、走行中の車に電気を送れるスウェーデンの電気道路は、ハイブリッド車の弱点を克服するひとつの方法を示しました。再生可能エネルギーの発展は電気の活躍の場を増やし、新しい生活スタイルを生み出すきっかけになったようです。

これに比べると、日本は再生可能エネルギーの活用が遅れているようです。日本は土地は少ないものの交通インフラが発達しているので、海外の太陽光発電道路から見習えるものがたくさんありそうですよね。

分散型の再生可能エネルギーで、日本の暮らしをもっと豊かにする方法を考えてみませんか?