太陽光発電の大きなメリットに、停電中でも非常用電源として電気が使えることがあります。停電になっても、パワコン(パワーコンディショナ―)の自立運転機能によって最大1500Wの電力を使用することが可能です。
たとえば、1000Wの電子レンジ、250Wの冷蔵庫、210Wのテレビ、5Wの携帯電話などを同時に使用できるのです。
しかし、停電になると同時に自動的に使えるようになるわけではありません。多くの太陽光発電システムは、停電したら自分の手で「自立運転モード(自立運転機能)」に切り替える必要があります。
この記事では、停電時にパワコンを自立運転モードに切り替える方法について説明します。
太陽光発電を停電中に使用する手順
停電中に太陽光発電を使用するためには、きちんと手順を踏む必要があります。ここでは、停電した際に太陽光発電の自立運転機能を利用するための手順について説明します。
主電源ブレーカーと太陽光発電ブレーカーを切る
まず、安全のために主電源のブレーカーを切ります。ブレーカーの電源が入ったままの状態で停電が終了し、電力会社からの通電が開始されて電化製品が動き出すと、火災などの思わぬ事故につながりかねません。これを防ぐために主電源のブレーカーを切るのです。
つぎに、太陽光発電のブレーカーの位置を確認します。ブレーカーの位置は、屋内の壁面に設置してある場合と、屋外のパワコンに設置している場合があります。
また、ブレーカーの位置はメーカーによっても異なりますので、取り扱い説明書を参考に確認しましょう。太陽光発電のブレーカーの位置を確認できたら、それを切ります。
自立運転モードに切り替える
主電源と太陽光発電のブレーカーを切ったら、次はパワコンの運転モードを切り替える手順になります。太陽光発電は通常、連系運転モードで作動しています。
連系運転モードとは、電力会社とつながって電気を売ることも買うこともできる状態です。停電時に電気を使用するためには、これを自立運転モードに切り替えなければなりません。
自立運転モードに切り替える方法は、メーカーによっても異なりますが、おおむね下記のようになります。
- 運転スイッチを切る
- 外部のサービスブレーカーをOFFにする
- 再度運転スイッチを入れる
これで切り替えは完了ですが、運転スイッチや外部のサービスブレーカーの位置はメーカーによっても違ってきますので、取り扱い説明書で確認しておきましょう。
自立運転用コンセントの位置を確認する
停電時に電化製品を使用するためには、自立運転用コンセントに電源コードをつながなければなりません。いつも使っているコンセントにプラグを差し込んでも、電気は使えませんので注意が必要です。
まず、自立運転用コンセントの位置を確認しましょう。パワコンを屋外に設置している場合は、部屋内や廊下の足元など屋内にコンセントが用意されているケースがほとんどですが、屋外の壁面などに設置されていることもあります。
パワコンを屋内に設置している場合は、パワコンの側面にコンセントが用意されているケースがほとんどですが、パワコンとは別の場所に設置されていることもあります。
自立運転用コンセントの位置がわからないときは、工事を行った業者に確認しましょう。
翌日も停電だった場合と停電終了後の操作
翌日も引き続き停電が復旧しなかった場合には、あらためて対処しなければなりません。また、停電が終了したら通常運転に戻す必要があります。ここでは、翌日も停電だった場合と停電終了後の操作方法について説明します。
停電が続いた翌朝は自立運転に手動操作する
蓄電池システムを設置している場合を除いて、自立運転モードで電気を使用できるのは、太陽が出ている昼間だけです。
自立運転モードの場合、日が沈むと運転が自動的に停止してしまいます。
そして、翌朝太陽が昇っても自動的に運転を開始することはありません。
そのため、翌日も停電が復旧しない場合には、手動で自立運転を継続する必要があるのです。再度運転スイッチを入れて、運転を開始させましょう。
電気が復旧したら通常運転に手動で戻す
停電が終了したら、運転モードを通常の状態に戻さなければなりません。通常モードに戻すことで、FIT制度を利用しているなら余剰売電できる状態になります。
手順としては自立運転モードに切り替えた場合の逆になります。
- 運転スイッチを切る
- 余剰電力を売電するための連係ブレーカーをONにする
- 再度運転スイッチを入れる
- 太陽光発電用ブレーカーの電源を入れる
- メインブレーカーの電源を入れる
これで、従来の状態に戻すことができます。
停電中に太陽光発電を使う時の注意点
停電中に太陽光発電を使う際には、注意したい点がいくつかあります。停電になってからあわてないように、事前に知っておくべきことを紹介します。
自立運転用コンセントが必要
太陽光発電を自立運転モードにして電気を使用するためには、「自立運転用コンセント」が必要です。いつも使っている壁のコンセントを使用することはできません。
そのため、停電時にあわてることのないように、自立運転用コンセントの位置を事前に確認しておきましょう。
自立運転用コンセントは多くの場合、パワコンや玄関などの分電盤に設置されています。実際に電化製品を使用する場所とは離れていることが多いため、長めの延長コードや差し込み口数の多い電源タップを用意しておくとよいでしょう。
突入電流が大きい家電製品は注意が必要
自立運転モードでは、AC100Vで最大1500Wまでの電気を使用することができます。この1500Wは合計の数字ですので、たとえば1300WのIHジャー炊飯器と200Wの液晶テレビであれば同時に使用できます。
携帯電話充電器などは5Wと消費電力が少ないので問題ありませんが、電子レンジは1300W、電気ポットは1000Wなどと消費電力が大きいので、同時に使用する際には注意が必要です。
また、1500W未満の電化製品であっても注意が必要な場合があります。電気機器の電源を入れると、その初期段階で定格消費電力を超えた大きな電流が流れることがあります。これは、突入電流と呼ばれるもので、機器によっては消費電力の2~3倍の電気が流れるのです。
たとえば、モーターが含まれる洗濯機や掃除機、ヒーター類、電気工具などは突入電流が大きいので、使用する際には注意が必要です。
停電中に使うべきではない電化製品としては、発電量が足りなくなるとデータが壊れる可能性のあるデスクトップパソコン、生命維持のための医療機器などが挙げられます。
これらの電化製品を使用する際は、自動で自立運転を開始する無停電給電機能つきの太陽光発電システムや蓄電池を用いるのがおすすめです。
主な電化製品の消費電力の目安
主な電化製品の消費電力の目安を紹介します。
【太陽光発電で使用可能であるが突入電力が大きい傾向にある電化】
各家電の消費電力をまとめてみました。
食器洗い乾燥機 (100V卓上タイプ) | 1300W |
---|---|
ドラム式洗濯乾燥機 (洗濯・脱水容量9kg) | 乾燥時:1300W 洗濯時:200W |
ヘアードライヤー | 1200W |
冷蔵庫(450Lクラス) ※突入電力が低い機種もある | 250W |
テレビ (液晶42型) | 210W |
【その他の太陽光発電で使用可能な電化】
アイロン※ | 1400W |
---|---|
電気ケトル | 1250W |
携帯電話の充電 | 5W |
※使用できるが電力が大きいので極力控えた方がよい
太陽光発電を設置していても、蓄電池を導入していない場合、停電時に使用できる電気の量は1500Wと限りがあります。普段から使用することが多い電化製品の消費電力の目安を知っておきましょう。
節約だけじゃない!停電時にも活用できる太陽光発電のメリット
太陽光発電のメリットとしては、余った電気を売って収入を増やせる、光熱費を節約できることが知られていますが、それだけではありません。停電時でも電気が使えるという大きなメリットもあるのです。
今回紹介したように、停電になったときの切り替え方法やコンセントの位置を事前に知っておけば非常時でも安心です。
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