住宅の省エネ義務化と今後の影響

2020年に開始予定だった「新築住宅に対する省エネ義務化制度」は2025年からとなりました。しかし、電気代の高騰などエネルギーの消費量が年々増加するなか、住宅部門においても省エネ・地球温暖化対策についての対応が求められています。

東京都は2022年5月にある一定の条件を満たす新築住宅に対して太陽光発電の設置を義務化する条例を年度中に決定するとパブリックコメントが発表されました。

具体的には都内で年間2万平方メートル以上の新築供給量がある住宅メーカーに義務が課せられる予定であり、都内の5割の新築が対象となる見込みとの事です。

この先、体制が整えば、東京都だけでなく様々な都道府県でこの条例が実施される可能性は高いでしょう。

この記事では、省エネ義務化とはどのようなものなのか、省エネ義務化を見据えてこれからどんな住宅を建てるべきなのかなどについて説明します。

省エネ基準の義務化とは?

省エネ基準とは、「建築物省エネ法」に基づいて定められている、建築物のエネルギー消費性能を表す基準のことです。ここでは、省エネ基準の概要と、なぜ義務化されようとしているのか、その背景について説明します。

増加する住宅の消費エネルギー対策が目的

省エネ基準の義務化

資源エネルギー庁の調査によると、住宅・建築物部門のエネルギー消費は全エネルギー消費量の3割以上を占めています。産業・運輸部門などと比べてもエネルギー消費の伸び率は高く、2011年までの20年間で約25%も増加。

二酸化炭素排出量は、48.1%も増えているのです。

このような状況のなか、省エネ基準も1980年から段階的に強化されてきました。ただし、2025年度において予定されている義務化では、小規模住宅(注文住宅・分譲住宅・建売住宅)と小規模建築物は除外されています。

今回延期になった理由には、現段階で基準適合に対応するのが難しい事業者数が多いことが挙げられています。つまり、将来的にこの問題が解消されれば、再び住宅の省エネ義務化に向かう可能性が高いといえるでしょう。

省エネ義務化が既存の家にもたらす影響

省エネ性能義務化のリスク

住宅の質について定める「省エネ性能義務化」が実行されても、既存の住宅の多くは法で定められた基準を満たしていません。従来の住宅は、省エネ性能に欠けていても、建てた当時は合法だったため「既存不適格」という扱いになります。

こうした住宅は直ちに違法建築になるわけではありませんが、起こりうるリスクはあります。

将来的に省エネ基準が義務化された場合に、基準を満たしていない既存の住宅には、どのようなリスクがあるのでしょうか。

既築の住宅の資産価値が下がるリスク

住宅の資産価値が下がる

省エネ基準が義務化されると、改正省エネ基準で建築していない住宅の評価は下がる可能性が高いといえます。かつての耐震性能に関して、同じようなことがありました。

耐震性能においては、1981年に改正された新耐震基準と、それ以前の旧耐震基準に大きく区別されています。新耐震基準に適合しているかどうかは、今日における住宅の価値に大きく影響しています。

既存不適格物件は「買い手が見つからない」などのリスクがあり、多くの物件がコストをかけた補強工事を行いました。もし、工事を未実施にしてきたとしても「安値で買い叩かれる」可能性が高いのです。

省エネ基準が義務化されると、省エネ性能について新性能と旧性能に線引きされることが考えられます。同じ年に建築された同程度の住宅であっても、改正省エネ基準をクリアしていない「既存不適格物件」になっただけで、将来の資産価値に雲泥の差がついてしまうのです。

「省エネ性能に欠ける家が売りに出せなくなる」とは

住宅の価値

省エネ基準・太陽光発電などが義務化されると、省エネ基準を満たしていない住宅は、売りたくても売れないケースがでてくることが考えられます。ここでも、耐震基準と同様に取り扱われることが予想されます。

旧耐震基準のマンションを購入する際には、住宅ローンが組めない、組めるにしても借入可能期間が極端に短くなるなどのデメリットが現実のものになりました。

住宅を購入するほとんどの人は、銀行から借り入れをして資金を調達します。しかし、省エネ基準を満たしていないためにローンを組めないのであれば、なかなか買い手は現れないでしょう。つまり、売りたくても売れない状態になってしまうのです。

仮に、買い手が現れたにしても、他に買い手がいないことを理由に安く買い叩かれる可能性もあります。省エネ基準を満たしていないと、このようなリスクがあることも踏まえておきましょう。

住宅を省エネ化するとどうなる? 施策と住まいのメリット

省エネ住宅のメリット

省エネ義務化では、断熱と日射熱を防ぐ「外皮性能」、家庭内で使われるエネルギー量を減らす「一次エネルギー消費量」の2つの能力について基準に適合されることが求められます。

基準に適合させるためにはコストが必要になりますが、光熱費が抑えられる、暮らしが快適になるうえに補助金が受けられるというメリットもあるのです。

断熱性が上がると電気料金が安くなる

電気料金が安くなる

省エネ基準に適合させるためには、住宅の断熱材や窓ガラス、サッシ、玄関などの断熱性能を上げることになります。従来の住宅では、エアコンや暖房を使用していてもスイッチを切ると、すぐに室内温度が元に戻ってしまいます。

しかし、省エネ基準に適合させると住宅の断熱性が高まり、外気温の影響を受けにくくなるのです。そのため、エアコンや暖房を頻繁に使用する必要もなくなり、光熱費を削減することができます。

また、断熱性が低いと部屋内の温度差が大きく、結露が発生しやすいという問題がありました。省エネ基準に適合した住宅は、このような問題も起こりにくく、カビの発生や木材の腐食などが抑えられ、家の耐久性が高まるというメリットもあります。

気密性が高まると健康的な空間が作れる

健康的な空間

省エネ基準に適合すると、気密性が高く「隙間のない家」になります。隙間風が入ることもないので快適な室温を保つことができ、床の底冷えなども防ぐことが可能です。屋内の温度差も小さくなるため、ヒートショックの防止にもつながります。

隙間がないためハウスダストや花粉など有害物質の侵入も防ぎ、健康的で住みやすい住宅になるのもメリットです。また、気密性が高まると遮音性も高くなるので、車の騒音などが遮られ、静かで快適な住宅となります。

エネルギー消費量を抑えて電気料金が安くなる

エネルギー消費量を抑えて電気料金が安くなる

省エネ基準に適合するためには、一次エネルギー消費量を基準値以下にすることが求められます。一次エネルギー消費量とは、冷暖房をはじめ、換気、給湯、照明など住宅の設備機器が消費するエネルギーを熱量換算した値のことです。

テレビやパソコン、ドライヤー、電子レンジなどの住宅設備機器以外の電気製品が消費するエネルギーは含まれません。

一次エネルギー消費量を基準値以下にするためには、エコキュートなど高効率の給湯器やLED照明、省エネ性能の高いエアコン、熱交換器が付いた換気設備などを使用して消費するエネルギー量を抑えます。

また、太陽光発電などの自家発電設備でエネルギーを創り出すことも一次エネルギー消費量を減らすことにつながります。住宅内のエネルギー消費量を抑えることで、電気代など光熱費を安くできるのが大きなメリットです。

省エネ住宅の購入・改修で補助金が受けられる

省エネ住宅の購入補助金

省エネ住宅の購入や改修をする際には、補助金を受けることも可能です。

2018年時点で受けられる補助金事業にZEH(ゼッチ)があります。ZEHとは「ゼロ・エネルギー・ハウス」を略したもので、太陽光発電などで電気を創り出し、蓄電池に貯めて利用することで一次エネルギー消費量の収支がゼロになる住宅を指します。

このZEHの住宅を購入、または改修する場合に補助金を受けられるのがZEH支援事業です。補助金が受けられる対象となるのは、ZEH対象の新築住宅を購入する人、建売住宅を購入する人、自宅をZEHに改修する人です。

定額70万円に加えて最大30万円の蓄電システム補助金が支給されます。

https://www.tainavi.com/library/4078/
https://www.tainavi.com/library/4396/

省エネ・太陽光発電の義務化に備えて!今こそ住まいの環境を見直そう

省エネ・太陽光発電の義務化

新築住宅に対する省エネ義務化は延期されましたが、特に一戸建て住宅は将来の義務化に備えて省エネ化に取り組むことが大切です。省エネ基準に適合すれば、住心地が快適になるだけでなく、光熱費を節約することもできます。

また、将来売却するような場合でも、大きく価値が下がるような心配もありません。

太陽光発電システムを設置すれば、電気料金を節約できるうえに、売電して副収入を得ることも可能です。今なら補助金も利用できますが、将来的にはなくなる可能性もあります。太陽光発電システムを設置するなら、今がチャンスといえるでしょう。

太陽光発電を利用して省エネ化すれば、住宅の資産価値も高まります。太陽光発電システムの見積もりを取るなら、一括で無料見積もり依頼ができる「タイナビ」がおすすめです。まずは、タイナビを利用して、見積もりを取ってみましょう。