日本の住宅用太陽光発電は全国的に普及が進み、一般市民にとってもすっかり身近な存在になりました。「そろそろ我が家にも」と考える人もいるのではないでしょうか。
近年急速にユーザーが増えたような印象を受ける太陽光発電ですが、実は普及自体は10年以上前から始まっています。このコラムでは、住宅用太陽光発電のこれまでの歩みや世界の太陽光発電事情、今後の展望について解説していきます。
住宅用太陽光発電の国内の普及率
住宅用太陽光発電の国内における普及率は、2018年度で6.0%の見込みとなっています(富士経済「2018年版住宅エネルギー・サービス・関連機器エリア別普及予測調査」)。太陽光発電システムを設置している住宅数(ストック住宅数)は322万戸になる計算です。
太陽光発電はこの10年間で急速に普及が進みました。この段落では、これまでの太陽光発電普及の歴史を簡単に振り返ります。
注目が集まったのは2011年
太陽光発電が急速に普及し始めたきっかけは、2011年の東日本大震災です。
現在のFIT制度、すなわち住宅用太陽光発電の余剰電力を買い取る制度そのものは2009年からスタートしていました。しかし、当時は太陽光発電システムの導入費用が高かったこともあり、広く普及するまでには至らなかったのです。
こうした状況を大きく変えたのが東日本大震災でした。ライフラインへの影響は被災地だけにとどまらず、事故があった福島第一原発から電力供給をしていた東京電力管内全域に及ぶことになったからです。
一時は電力不足への懸念が高まり、広いエリアで計画停電が実施される事態となりました。電力供給の多くを火力、原子力、水力発電に依存してきた日本で、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーに目を向ける動きが出てきたのです。
なかでも、家庭で所有できる太陽光発電には注目が集まり、さらに初期費用を売電収入でまかなえる「FIT制度」が整ったことで、導入が一気に拡大しました。
日本の太陽光発電の導入量は、2012年時点で世界第5位にランクインするまで普及したのです。
住宅用太陽光発電を設置した理由は
実際のところ、住宅用太陽光発電の設置を決めた人たちは、どのような理由で導入を決意したのでしょうか。蓄電池を買うに至った動機を見ていきましょう。
①東日本大震災の教訓から
私の住んでいる地域は、計画停電の実施エリア内にありました。そのため、東日本大震災後、1日数時間とはいえ電気のない生活を送ることになったのです。まだ肌寒い時分で、特に夜を過ごすのがとてもつらかったのを覚えています。
この時は事前に停電スケジュールが知らされていましたが、それでもかなり大変でした。
いつまた災害が起きるか分からないですし、そうなった場合電気が使えない生活がどれくらい続くのかも分かりません。
そのような事態に備えるために、太陽光発電を導入しました。安心を買うという意味でも早めに購入してよかったと思っています。将来的には蓄電池も購入し、完全に電気を自給自足できる体制を整えたいです。
※ 複数のエピソードに編集を加え、まとめています。
②売電収入を家計の助けに
ここ数年間の光熱費高騰が気になり、太陽光発電に興味を持つようになりました。太陽光発電の電気を使えば毎月の電気料金が節約でき、しかも使わずに余った電気は売電できます。「初期費用はかかっても長期的に見れば金銭面でお得になる」ということで、購入を決意。
実際に購入してみると、売電額や節電について家族で話す機会も増えて、結果的にエネルギーに対する意識も変わってきました。地球環境への意識が高まっている時代でもありますし、子供の教育面でも良い影響があったと思っています。
※ 複数のエピソードに編集を加え、まとめています。
日本の太陽光発電はやっぱり高い? 海外との比較
日本は世界5位の導入量を誇るとはいえ、まだ太陽光発電が未設置の家庭はたくさんあります。さらなる普及を妨げている原因のうち、最も大きいといわれているのがコストの問題です。
太陽光発電の導入コストに関して、世界の標準的な価格に比べて日本はまだまだ割高です。
2014年の住宅用太陽光発電の国別システム価格データによると、
システム費用 | |
---|---|
ドイツ | 約2ドル/W |
日本 | 約3.5ドル/W |
アメリカ | 約4ドル/W |
アメリカのように4ドル/W超と一見日本よりも導入コストが高く見える国もあります。しかし、アメリカの場合、費用の大半は広告費や手続き費用です。パネルなどの機材コストは日本よりも安いのですが、機器以外の営業コストが高いため、全体的には日本よりも高くなっています。
それでは、ドイツと日本とで、どうしてこんなにも価格差が生まれてしまったのでしょうか。その要因の1つとして挙げられるのが、モジュールコストの差です。
同じ容量のモジュールでも、ドイツは8万円/kW、日本は14.5万円/kWと6.5万円の価格差があります。これは、日本のユーザーが高価な国内産のモジュールを好む傾向があるからだと考えられます。
さらに、工事費用の価格も日本とドイツでは差があります。環境意識の高いドイツでは設置工事が効率的に行われており、日本よりも工期が短くなっています。その結果、ドイツは日本よりも工事費が安いのです。
こうした事情を考え合わせると、今後日本のシステム費用を下げるためには、国内産モジュールのコスト削減や、海外メーカーの安いパネルを検討する、ドイツの工法から学び工期を短縮するといった工夫が不可欠といえるでしょう。
それでも、太陽光発電システムの設置費用は年々安くなっていて、以前と比べると一般家庭でも導入しやすい状況になっています。特に一括見積りサービスを使えば、複数の業者を簡単に比較できるので、より導入コストを抑えられます。
これから導入を検討している人には、タイナビの無料一括見積りがおすすめです。
太陽光発電はどこのエリアで人気? 都道府県別の普及率
日本は北海道から沖縄まで全国どこでも太陽光発電ができます。ただ、実際にはそのなかでも特に太陽光発電の普及が進んでいるエリアとそうでないエリアがあるようです。
都道府県別の普及状況、およびその背景事情について紹介します。まずは、都道府県別に2009~2014年の太陽光発電の普及率を見ていくことにしましょう。
1位:宮崎県(14.3%)
2位:佐賀県(13.9%)
3位:山梨県(12.4%)
4位:鹿児島県(12.0%)
5位:栃木県、熊本県(11.8%)
日照時間や快晴日の多い九州の県が上位になっていることがわかります。「せっかくの日差しを有効に使おう」という意識が、太陽光発電導入の後押しになっていると考えられます。
また、宮崎や熊本では、県をあげて太陽光発電の関連工場の誘致に力を入れており、そのことも普及率を押し上げる要因となっています。
青森、秋田、新潟、福井といった東北地方や日本海側では、雪や日照時間の短さがネックとなっているのか、他の地域よりも普及率が低くなっているようです。
しかし、東北や北海道など積雪量の多い地域でも、太陽光発電に不向きというわけではありません。パネルの角度や方角を寒冷地向きに工夫すれば、発電効率を上げることは十分に可能です。
太陽光設置から10年間たつ家庭は56万戸に及ぶ
余剰電力買取制度(現在のFIT制度)が2009年にスタートしてから、10年が経とうとしています。
FIT制度による固定買取期間は10年なので、2019年は2009年に売電を始めた56万戸の世帯がFIT制度の期限を迎える節目の年です。
2009年当時は太陽光発電システム費用が62.4万円/kWと高く、まだ一般には広く普及していない状況でした。それでも、2009年以前に導入した人を含め、すでに56万戸もの世帯で太陽光発電が利用されていたということになります。
また、2020年度以降も毎年20~30万戸、2025年度以降は毎年度15~20万戸が卒FITを迎える見込みです。
太陽光発電に注目が集まる前から、多くの人がすでに太陽光発電に興味を持っていたこと、さらに普及が進むにつれて毎年導入する人が増えていった様子がうかがえます。
卒FIT後も売電できることに決定!
以前は「FITが終わった後は売電できないの?」と不安の声もありました。2019年は、FIT制度終了を迎える世帯が出る初めての年です。
大手の電力会社や新電力が卒FIT後の余剰電力買取サービスを発表したことで、こうした不安はすでに解消しています。自宅で発電した電気を売りたい人は、安心して売電を続けられることになったのです。
一方、卒FITを機に、下がる売電価格と上がる電気料金のバランスを考えて、作った電気を自家消費用に回すことで経済的メリットが大きくなります。
このようなケースでは、蓄電池やエコキュートを設置し、日中に作った電気を余さず使う(貯める)と、電気代の節約効果が高まります。特に蓄電池は停電への対策になるというメリットもあり、設置に前向きな人が増えてきています。
自然災害から暮らしを守るため、「普段から非常時に備えておきたい」と考える人が多いようです。
住宅用太陽光発電はこれからも普及拡大し続ける
東日本大震災以降、住宅用太陽光発電は急速に普及しつつあります。これは、太陽光発電で売電収入を得たい人だけでなく、万が一の備えとして導入を検討する人も増えてきたためです。
住宅用太陽光発電のシステム費用は年々安くなっており、以前と比べると導入へのハードルも下がってきました。卒FIT後の余剰電力の取扱に関する心配も解消され、今後さらに普及が進む見込みです。
初期費用が安くなった現在の状況は、これから太陽光発電を導入したい人にとっては追い風といえます。
もっとも太陽光発電は家に合わせてオーダーメイドで設置するものであり、また業者によって価格にばらつきがあります。一括見積りサービスを賢く利用し、よく比較検討してから業者を選ぶことをおすすめします。
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