これから太陽光発電を導入するなら、売電ではなく自家消費を前提に考えた方がお得です。主な理由としては、電気料金の値上がりとFIT(固定価格買取制度)による売電価格の下落です。つまり「売るより使った方がお得になった」が背景にあります。
そこで今回は、自家消費が有利になった具体的な理由、効率的な自家消費でよりメリットを得る方法について解説します。
自家消費型太陽光発電が増えてきている背景
自家消費型太陽光発電の導入が増えている背景には、売電のメリットが低下したこと、電気代の値上がりが挙げられます。
売電よりも自家消費が有利になった理由について解説しましょう。
太陽光発電の売電価格が安くなっている
太陽光発電の電力は、買電価格より売電価格が高ければ売ったほうがお得です。売電価格の方が安くなってしまうなら、自家消費の方がメリットがあります。
太陽光発電は、固定価格買取制度(FIT制度)によって高い売電価格が設定されています。
FIT制度が始まった2012年時点では、住宅用10kW未満の太陽光発電の売電価格は1kWhあたり42円です。
翌年は38円に下がり、2023年時点では16円まで下落しています。それでも、買電価格より売電価格の方が高いため、電力は売った方がお得でした。
FIT制度が終わる10年目以降の売電価格は1kWhあたり8円~11円程度といわれています。売電収入が大幅に下がってしまうため、「売電で収入を得るより、自家消費で支出(電気代)を減らす運用」に切り替えた方がお得になるわけです。
電気代の値上がりが懸念されている
電気代が上がるほど(売電価格より買電価格が高くなるほど)、太陽光発電は自家消費がお得になります。電気代は今後も高騰する可能性が高いという中で、電気代の高騰リスクを3つ紹介します。
1つ目は、再エネ賦課金の負担増です。
一般家庭で発電した電力は、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束しています。買取価格の一部は電気料金に上乗せされる形で、再エネ賦課金として電気を利用するすべての人が支払わなければなりません。
再エネ賦課金は、2017年度で1kWhあたり2.64円、2018年度で2.90円、2019年で2.95円となっています。FIT制度による再生可能エネルギー発電が増えるほど、再エネ賦課金も値上がりしています。
2つ目は、燃料費の高騰です。
電気料金の一部に燃料費調整単価があり、発電燃料の輸入価格によって変動します。燃料費が下がれば電気料金も下がりますが、財務省のデータでは燃料の輸入価格は2016年から上昇が続いており、今後も高騰する見通しです。
3つ目は、廃炉費用の負担です。
経済産業省は、すべての電気利用者に原発の廃炉費用を負担してもらう方針を固めました。廃炉が長期化すれば費用がかさみ、電気料金のさらなる上昇が予測されます。
3つの理由からわかる通り、電力会社から購入する電力は、常に価格が変動するリスクを伴っています。
しかし、太陽光発電の自家消費なら電力会社から購入する電気量を減らせるため、光熱費の節約に直結します。
自家消費率が高い太陽光発電が売電よりお得な理由
太陽光発電の自家消費は、売電と比べてどの程度お得なのかを解説しましょう。
自家消費率とは、太陽光発電の電力をどのくらい使用したのかの割合のことです。自家消費率は全国的には3割が基本ですが、4割、5割と自家消費の比率を増やすことで売電よりも自家消費がお得になります。
住宅用太陽光発電の一般的な設置・運用例から、自家消費率別にどの程度の差が出るか、10年後、20年後それぞれの収支を見てみましょう。
3.4kWの太陽光発電を100万円で購入
月の電気代13500円(太陽光発電設置前)
33円で売電(10年目まで)
9円で売電(11〜20年目まで)
自家消費率 | 10年後の収支 | 20年後の収支 |
---|---|---|
42% | 約23万 | 約63万円 |
56% | 約21万円 | 約67万円 |
84% | 約18万円 | 約75万円 |
売電単価33円の最初10年間は、自家消費より売電メインの運用がお得になります。しかし、売電価格が9円に下がった11年目〜20年で見ると収支が逆転、売電より自家消費率が高い自家消費メインの運用がお得なことが分かります。
太陽光発電の自家消費は10年後からが真骨頂
自家消費の経済的メリットが最も高まるタイミングは、FIT期間が終わる10年後からです。なぜならFITで定められる運用開始10年間の売電価格は、消費者が投資額を回収できるようにやや高めに設定されているからです。
FIT期間が終わった後、売電価格を決めるのは電力会社です。電力会社から買う電気より、安い価格で売電することになります。
売電価格が電力会社の電気を買う値段よりも安いなら、太陽光発電の電気は売らずに自家消費した方がお得になります。
卒FITの売電価格は大幅に安くなる
2023年度の太陽光発電の売電価格は1kWhあたり16円ですが、FIT買取期間が終了すると1kWhあたり8~11円まで下がります。
FIT買取期間中の1kWhあたり16円であれば、電力会社から購入する電気代の平均とほぼ同額です。しかし、卒FIT後の1kWhあたり8~11円では、電力会社から購入するより電気より下回る価格で売電することになるため、自家消費がお得になります。
電力会社のプランで電気使用料8000円の場合、その使用量の半分を太陽光発電に置き換えれば、月5000円程度まで安くなります。
さらには、売電契約をしないという選択肢もあります。この場合、家庭の電気使用量の半分を太陽光発電にすると、電気代の支払い額は4000円程度にまで安くなるということです。
今後も電気料金が上昇する可能性を考えると、太陽光発電の自家消費による経済的メリットは、卒FITの10年後に最高潮を迎えることは間違いないでしょう。
太陽光発電の自家消費率を高めるためのポイント
自家消費型太陽光発電のメリットは、自家消費率を上げることでさらに高まります。自家消費率を上げるためのポイントを紹介しましょう。
発電量を多く得られる方角にする
日本で太陽光パネルの発電量が最も大きくなるのは、真南で傾斜角度30度のケースです。方位が45度変わると発電量の割合はおよそ5%落ちるとの統計も出ています。
裏技?! 自家消費率を高める設置方角
太陽光パネルは日当たりの良い南側に設置すると発電量が大きくなりますが、南東や南西の方が自家消費率は高まるケースもあります。
太陽光発電の発電量のピークは、太陽が南にくる昼の12時頃です。しかし、一般家庭の電気消費量は出勤前の8~9時、帰宅後の19時頃に増える傾向にあります。
少しでも発電量のピークと電力需要のタイミングを近づけるなら、太陽光パネルは南ではなく、南東や南西に設置した方が効果的です。
ただし、発電量を最大化するために最適な方角はこれと異なります。
発電量のピークと電力消費のタイミングが合わない場合は、蓄電池やタイマー機能付きの家電で電力消費のタイミングを合わせるのが効果的です。
太陽光発電の電気で蓄電池を充電する
太陽光発電と蓄電池を併用すれば、ピークシフトが可能です。ピークシフトとは、電気使用量が増える時間帯を、使用量の少ない時間帯に移行することです。
太陽光発電による夜間の発電はできませんが、昼間に発電した電力を蓄電池に貯めておけば、夜間の自家消費率を上げることができます。
夜のうちに蓄電池を充電しておけば、売電量の増加にもつながります。高額な蓄電池の購入が難しい場合は、家電の使い方を工夫することで自家消費率の向上が可能です。ライフスタイルや収支計画を考慮した上で、蓄電池の利用を検討してみましょう。
エコキュートや家電のタイマー機能でもピークシフトできる
エコキュートとは、ヒートポンプを利用して空気の熱でお湯を沸かす、電気湯沸かし器のことです。
一般的に、エコキュートは料金が安い夜間電力でお湯を沸かし、日中の電気料金を安くする使い方をします。
しかし、太陽光発電の自家消費率を上げるなら、逆の使い方をします。日中の太陽光発電で作った電力でお湯を沸かし、夜間にお湯を使います。売電価格が夜間電力料金よりも安い場合、経済的なメリットが期待できるでしょう。
また、洗濯乾燥機や食洗機などタイマー機能を備えた家電でも、同様の使い方すれば自家消費率の向上が見込めます。
今の時代に得する太陽光発電で第一に重要なこと
太陽光発電をお得に利用するなら、自家消費率を上げると同時に太陽光発電の設置コストを抑える必要があります。設置にかかる費用は、販売会社によって数十万円、100万円近く差が出る時もあります。
太陽光発電を設置した後でも、蓄電池の併用や家電の使い方の工夫などによって、自家消費率を上げることは可能です。しかし、よりお得に太陽光発電を利用するなら、初期費用は抑えたほうが良いです。
タイナビなら、太陽光発電と蓄電池のセットでも見積もりができます。ぜひ、利用を検討してみてはどうでしょうか。
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